出版社内容情報
松本清張[マツモト セイチョウ]
著・文・その他
内容説明
戦国時代。下剋上の世にあって、大内・尼子の強国間で知略謀略を尽くして大大名となった毛利元就(「調略」)。伸長してくる後輩秀吉に、複雑な心境に陥る丹羽長秀(「腹中の敵」)。家康に重用された父のあとを継ぎ、幕府で権勢をふるった本多正純(「戦国権謀」)など、乱世を生きた様々な武将を描いた珠玉の10編。待望の新シリーズ刊行開始。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年福岡県企救郡板櫃村(現・北九州市)生まれ。50年「西郷札」が懸賞小説に入選。その後、純文学・推理小説・歴史小説・ノンフィクションなど、広範な領域で常に“人間”を見つめ、その本質に迫る作品を発表しつづける。53年芥川賞、57年日本推理作家協会賞、67年吉川英治文学賞、70年菊池寛賞、90年朝日賞などを受賞。92年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
129
松本清張さんの戦国ものの短編集。毛利元就から伊東義祐、柳生一族まで幅広い人物を扱っています。総じて読後感は哀しいと言える。「武将不信」での最上義光。小田原攻めの頃から家康に近付いていた最上義光。盟友と思いながらも、家康が天下人となるや支配されている事を知る。家康の命により長子を廃し次男を世継とする。そこまでの忍従をしながらも義光の死から七年後に最上家は取り潰される。松本清張さんといえば社会派ミステリの印象が強いが、歴史物にも様々な作品があることを知る。稲富直家らかなりマニアックな武将も登場する幅広な作品。2017/11/26
ふじさん
90
好きな短編は、まずは「調略」、毛利元就の生涯を描いた史伝小説でミステリーに通ずる面白さがある。「陰謀将軍」、時代に翻弄された義昭の焦燥を忠実に描いた人物史伝の作品。「面貌」、面貌が醜悪だったばかりに家康に疎まれた徳川忠輝の数奇な運命を描いた力作。「戦国権謀」は、家康に重用された本多正信・正純親子の栄光と挫折を描いた戦国史伝の力作。「腹中の敵」は、秀吉のの後塵を拝することになった丹羽長秀の複雑な心境を巧みに描いた作品。どこかで読んだことのある作品ばかりだが、清張の作品はやはり何度読んでも面白い。 2021/10/25
関東大震災の被災者、特に虐殺された朝鮮の皆様に追悼・寺
71
「イヤミス」というのが近頃流行りだが、松本清張のこれは「イヤ歴史小説」と言うべきか。「松本清張の小説に出てくる人間はみんな悪人」と喝破したのは筒井康隆だが、みんな悪人と言うよりも、好感の持てない人間しか出て来ない戦国武将列伝である。快活で気宇壮大な戦国人など不在。武将の間にもいじめや炎上の如き誹謗中傷が横行している。どの短編も清張が尊敬する菊池寛の『忠直卿行状記』の末裔である。あの心理的イヤさを受け継いでいる。『忠直卿』はオチに救いがあるが、清張武将列伝には無い。ロマンや甘さが無く、かなり面白い。お薦め。2016/08/11
キムチ
63
このボリュームで、2時間足らずで・・脳内は戦国の血煙が渦巻いた。10篇が掲載、既読1篇。面白い展開ながら後で「史実と合致している!」と満足を抱けるのが清張時代物の特徴。戦国時代では猶更ペンが冴える訳。戦国ヒーロー以外の人物の紆余曲折、歯噛みして血がしたったであろう瞬間、幾層もの時間が流れたのに瞬時にして無に帰した最期、技に溺れ才に酔いつつもそれを「家康が見た」時点 闇に帰した一生など実に虚しい。最後の「柳生」が一番シュっと来た!石舟斎、宗矩、三嚴・・終えてみれば最も剣に疎かった宗冬が名跡を継いだ・・とは!2024/09/22
ソーダポップ
36
数ある時代小説の中で、清張らしい特徴が最もよく表されているのは、戦国武将の史伝小説だと思う。ここには、室町時代の末期から江戸時代の初期にかけて、いわゆる戦国乱世を駆け抜けた武将たちの物語が、ほぼ時代順に収録されている。それぞれ独立した作品で、連作やシリーズ物として書かれたわけではないが、どの作品も清張の透徹した史観が貫かれていて、まさしく「列伝」と呼ぶのに相応しい陣容になっている。十五篇、どこから読んでも清張短編の面白味を楽しめるが、最初から順を追って読んでいくと戦国時代の歴史通になったような気分がした。2023/05/26
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