出版社内容情報
古処 誠二[コドコロ セイジ]
著・文・その他
内容説明
僕の祖父はビルマ戦の帰還兵で、口を開けば戦争中の自慢話だ。自分が率いたのは世界最強分隊だったと誇り、現地の娘にモテたことなども得意満面に語る。何百回と繰り返される話だが、聞かないと鉄槌が下るのだ。だが、その祖父が入院し、うわごとで信じられない言葉を呟く…。たっぷり笑えて、時にハッと胸を衝かれる、男ばかり三代、ある一家の日々を描く。書店員さんが惚れこんで、弘栄堂ベスト2013大賞受賞!
著者等紹介
古処誠二[コドコロセイジ]
2010年、第3回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ばりぼー
43
ビルマ戦の帰還兵で、気に入らなければ平気で鉄槌を下す横暴な「独裁者」の祖父に振り回される、男ばかり三代の一家を描く家族小説。ガールフレンドの京子ちゃんとのディズニーデートも我慢して、健気に祖父の面倒を見る孫の「僕」の目を通して、戦って勝つことだけが唯一の価値観である頑迷な老人の生き様が活写されていて笑えます。月並みな反戦メッセージを入れないのが潔いというか、ある意味実に新鮮。八女茶と雪見だいふくをこよなく愛する頑固じじいが、脳内では悪役商会の八名信夫氏に勝手に変換されてしまいました(笑)。2016/08/31
ツバメマン★こち亀読破中
21
高校生、哲也はビルマからの帰還兵である祖父から、毎日戦争中の武勇伝を繰り返し聞かされうんざりしている。聞かないとこの横暴な専制君主から何をされるかわからないのだ。ところが、倒れて入院した祖父が寝言で信じられない一言を呟く!!ガールフレンドの京子ちゃんがいい味だしてる!そしてこの終わりかたも嫌いじゃないなあ。このおじいちゃんのキャラで他の作家が小説を書いたら面白いと思う!2019/06/04
モルワイデ鮒
19
無茶苦茶な祖父のビルマ語りと寝言。振り回される息子と孫。じいちゃんのキャラクターが強すぎる。戦争体験談をこんなコミカルでいいんだろうか。殺気を持って近付けば目を覚ますってなんなんだ笑っちゃったじゃないか。じいちゃんの寝言の意味と戦友の話で締まる。ビルマで勝っていたらどうなってたのかわからないが、いずれにしても戦争に行った人の心に沈んだ重いものを感じる。と思ったら雪見だいふく。京子ちゃんの印象が完璧すぎる。2024/08/07
ちもっこ
6
古処氏の戦争小説は頭を数発本気で殴られるレベルで痛いので覚悟が必要なため、なかなか読むのに気合いがいるので分岐点以降読めていない。家族小説の風合いが強そうなので気楽な気持ちで手に取った。戦争を楽しく語るおじいちゃんとその孫の話です。やっぱり最終的には一発くらいぶん殴られた感じはしますが、ユーモアもありクスクスと笑いながら読める。なのになにか大切なことを教わった気もする。やっぱりこの人すごい。なんでもっと騒がれないのか不思議である。2015/10/15
浅木原
4
200ページもないこのユーモア家族小説の中には、古処戦争小説の凄みが凝縮されている。ビルマ帰還兵の負けず嫌いな祖父と、それに振り回される孫の間に、最初から最後まで理解という橋は架け渡されない。どこまでいっても祖父は困った老人でしかなく、祖父が語るビルマの体験談から孫が学ぶことは何もないし、孫が祖父の苦労や寝言で呟く謝罪の意味を理解することもないし、それが良いと悪いとも決して言わない。祖父の体験はどこまでも祖父の個人的な体験でしかない。こういう話でそういう書き方をできるところが古処作品の凄みだと改めて思う。2017/09/08