内容説明
長崎で起きた中学生撲殺事件の取材をする建部は、その再会に運命のようなものを感じていた。殺害された少年の通夜に、かつて加害者の妻だった香織が被害者の遺族として現れたのだ。―心に癒しがたい傷を負い、今も母を強く想う真裕子。父母を知らず、心にもやもやしたものを抱える大輔。ふたりの行く先に待っているものとは。
著者等紹介
乃南アサ[ノナミアサ]
1960年東京生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務を経て、88年、『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞の優秀作になりデビュー。96年、『凍える牙』で第115回直木三十五賞を受賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のんき
102
母を殺された真裕子。新聞記者・建部。父が殺人者となった大輔。 三人のそれぞれの気持ちの描写が細かく詳しく書かれていて、読者にも三人の心の中が手に取るように分かります。七年経っても、真裕子は、事件のことを忘れていないし、忘れられないと思います。わたしも、真裕子の立場だったら、許せないし、憎しみもあるし、殺人を犯した相手の家族に償ってほしいし、謝罪もしてほしいって思うかなあ。この三人が、これからどうなるのか、明るい希望が持てるようになるのか?大輔も妹と仲良く暮らしていけるのか?続きが気になります。2019/03/09
kei302
52
事件が起こった作品「風紋」というベースあってこその本作。余すところなく描かれる圧倒的な深さ、人の行動原理の複雑さ。途中で「風紋」にも手を出す。熱中して読んだので、知恵熱(?)でぐったり。〈 ―― 何も期待しない 〉何度も何度も自分に言い聞かせる真裕子。真裕子が俊平と心を通わせる場面だけが救い。大輔:大人の男の人に遊んでもらったこと自体をまるで記憶していないのが悲しかった。誰か、大輔に手を差し伸べてくれる人さえいれば... 2020/07/25
坂城 弥生
44
大輔が道を踏み外しつつあるのが気になる…2021/07/19
楽駿@新潮部
44
川崎図書館本。読む進めば読み進むほどに、被害者の子供も、加害者の子供も、切ない道を歩いている。一つの事件の及ぼした影響は、どこまでも大きい。きちんと大人の庇護を受けた経験がないと、それとも、人はここまでこじれていくものなのか?どちらの立場でも、自分を貶めることによって、傷から目をそらせようとしているようにも見える。そうか。傷に向き合い、乗り越えていく覚悟を育てる時期に、事件によって、その時期を逃してしまったせいなのかな。辛いのに、その辛さに何処か共感しながら、早く下巻の順番よ、来い!2018/06/19
アーモンド
42
前巻に引き続き、ひとつの事件で被害者家族はもちろん加害者家族達の人生が狂わされていく様が重い。特に、その子供達の人生に大きな影響を与える現実。この先どんな人生を送るのか、乗り越えていけるのか…。下巻へ。2016/08/12