内容説明
抗いがたい力によって掏摸を続ける男が掏摸集団にスカウトされる。そこで出会う個性豊かな人間たちとは…「指」。失業中かつ恋人の部屋に居候中の男が、刑務所前にある定食屋で働かないかと誘われる。出所者を見張るのがその仕事なのだが、男は恋人の助言もあって料理に手を加え定食屋を大繁盛させる…「飯」。そして文庫化にあわせて新たに書かれた物語…「嘘」。3編を繋ぐ妙技も見事な作品集。都会の片隅に生息する“放浪者”を鋭く活写した第33回吉川英治文学新人賞候補作。
著者等紹介
三羽省吾[ミツバショウゴ]
1968年岡山県生まれ。2002年『太陽がイッパイいっぱい』で小説新潮長編新人賞を受賞しデビュー。06年『厭世フレーバー』、12年『Junk』でそれぞれ吉川英治文学新人賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はつばあば
62
啄木じゃないが・・器用とはいえない武骨な私の指をみて・・不幸な時代に生まれてこなかった事に感謝。サクラという刑事と掏り集団。戦後の浮浪者・・子供達・・喰っていかねば死ぬ。掏り?鍵師?。いいじゃないですか今の世の中人を殺める事ばかり。この方の本、最初は読みにくいのですが3編が繋がっているので2度読みをお勧め。(入院中のボケ)2017/08/23
那由多
24
初読み作家さん。衝動買いだったけど、当たりでした。『指』『飯』『嘘』の三編に登場人物のリンク有り。『指』掏摸クセのある男が掏摸集団にスカウトされ、あるミッションを遂行するメンバーに選ばれる。そこで知り合う掏摸の青年ボーヤに悲劇が起きるが割と清々しい。『飯』刑務所前のヒマな定食屋で働きながら、出所者を見張る仕事をすることになった主人公。ところが二日目にして不測の事態が起きる。主人公さえも予期せぬ定食屋の変化と、彼を雇った若い依頼人のやり取りが段々と面白さを増してくる。/この二つが特に良かった。2020/05/14
Kazuko Ohta
21
この人は、もっと売れて然るべき作家だと思います。第1章の『指』は、安定した生活を送っているのに、掏摸(スリ)の天賦の才を持つ男が掏摸集団にスカウトされる。第2章の『飯』は、彼女との格差に悩む男が刑務所前の定食屋で破格の報酬を提示されて働くことに。文庫版に収録の第3章は正直に言って蛇足かなという気もしなくはないですが、第2章までは参りました。自分のことを好きになれなかった男たちが、少しずつ熱い感情を持ちはじめるくだりに脱帽。同著者の『太陽がイッパイいっぱい』には敵いませんが、著作どれも今のところハズレなし。2018/02/19
きょん
12
スリや鍵師という小悪党たちの物語「指」「飯」の2編。「飯」はちょっとうまくいきすぎな展開かとも思うが面白く読めた。2016/03/06
やすべえ
9
やっぱり三羽さんは面白い!読後感がいつもいいのは最後に皆前向きになってるからなんですね。小悪党にいうのもなんですが皆いい人です。2016/04/25
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