内容説明
高校の修学旅行で人形浄瑠璃・文楽を観劇した健は、義太夫を語る大夫のエネルギーに圧倒されその虜になる。以来、義太夫を極めるため、傍からはバカに見えるほどの情熱を傾ける中、ある女性に恋をする。芸か恋か。悩む健は、人を愛することで義太夫の肝をつかんでいく―。若手大夫の成長を描く青春小説の傑作。
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乱読本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hiro
404
作者は二ヶ月に一度大阪へ文楽を見に行くとエッセイに書いているので、余程文楽が好きなのだと思っていたが、この本を読むと文楽に対する作者の思いが伝わってくる。主人公は就学旅行で文楽の虜になり大夫となったが、30歳を超えて芸と恋に悩む“青春?小説”。文楽の演目と主人公のリアルな恋と芸への悩みが重なりあい、それをクリアして主人公は成長していくところが、ここがこの小説の一番の見所。ただ文楽の知識があれば、より一層楽しめるだろう。また、大阪人としてもまったく、台詞の大阪弁は気にならなっかたところもしをんさん流石。2011/08/07
kishikan
402
本のカバーをよく見ず、また「仏果」という意味も分からずに購入してしまったため、この本が文楽に関した小説だとは知りませんでした。文楽は見たことはありませんが、歌舞伎は何度か見ていますので、浄瑠璃や演目も含め興味深く読みました。それにしても、三浦さんの文楽という芸の奥深さを描く筆力には、素晴らしいものがあります。加えて、愛の成就と芸を極める困難さ、その狭間で揺れる主人公「健」の心を文楽の演目に重ねているところなんて、さすが!それに何よりこの小説を面白くしているのが、ミラちゃんのコマッチャくれた可愛さでしょう。2011/09/28
佐々陽太朗(K.Tsubota)
367
一流のものだけが一流を知る。一つのものを至上と思い定めて他のものは失っても仕方なしと覚悟する。そうしなければ到達できないほどの高み。それほどの高みがあることを知るのは、その高みに至る途上にあってなお上をめざす者だけなのだ。子供は自分の限界を知らない。いずれは死ぬ運命にあることを今は意識していない。しかし、大人は、それも道を究めようとする者ならばなおさら己の限界を知っている。残された時間があまりに短いことも。本当に富士山に登ろうと決めた者だけが富士の頂に立つことが出来る。散歩のついでに登った者はいない。2012/08/09
ゲンショウ
327
図書館より拝借、拝読。芸の道とは、厳しいものなのですね。正に、生きる事全てを肥やしにして、その芸を育てて行く…。ジョンレノン曰わく、人生とはその事を考えていない時の事。文楽とは、他人の人生を考え、咀嚼し、伝える事が生業。自分の人生を喰われても仕方無いのかも知れないですね…。そんな、白刃の様な生き様を人形と語りと三味線とに分解して見せる文楽と謂う芸能は、察しを是とする日本人ならではのものなのでしょうね。生身の人間には、とても耐えられない。大変、勉強になりました。2013/01/20
じぇりい
281
さすが三浦しをん。文楽?浄瑠璃と違うん?と言う程の知識もない私でも、興味深く、面白く読めた。そして伝統芸能の奥深さを知る。ライブで見たくなった。某市長さんにも、読んでいただきたい。2012/11/25