内容説明
母親は出稼ぎから帰ってきて自殺した。子供の頃に大切な家族を失った幹郎は今、東京郊外で地域社会に根ざした家庭を築こうと固く心に誓っている。だが、そんな幹郎の想いをよそに、妻も娘もそれぞれの世界を築いてゆき、家庭に亀裂が生じはじめる…。経済発展に向けてひた走ってきた日本社会の歪みを、ある一家の崩壊を通して描ききった現代家族小説の白眉。
著者等紹介
篠田節子[シノダセツコ]
1955年東京都生まれ。東京学芸大学卒業。市役所に勤務後、90年『絹の変容』で第3回小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。96年『ゴサインタン―神の座―』で第10回山本周五郎賞、97年『女たちのジハード』で第117回直木賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
333
なんともやりきれない物語だ。3世代(祖母も含めると4世代)の人生がが語られるが、日本が高度経済成長期を迎え(農村にとってのそれは都市部とは違っていたようだが)、そして低成長期を迎えるほんのわずかと言っていい間に起こったことだ。主人公の幹郎には理解不能だっただろう。彼は真摯に生きてきたし、何がいけないというのでもない。社会の激変が彼の価値観を置いてきぼりにしてしまったのだ。男である自分には身につまされる話だ。女性の読者なら、あるいは妻の由美子に感情移入するのだろうか。作家の冷徹な視線が語るのは寂寥だ。2017/04/15
choco
64
あらゆるジャンルを描く篠田さん。今回の家族小説とも言えそうな4世代の歴史。戦後貧困な田舎からの集団出稼ぎは田舎ではよく聞く話。そんな出稼ぎの裏側に潜む人間コミュニティ。今も昔も人間の基本は変わらないかもしれないが、他者と違う事を認められない人達のコミュニティは息苦しい。幹郎が酷くちっぽけなオトコにみえる。どの時代もやっぱりオンナは強し?1番賢いのは茜かもしれない。2016/10/05
takaC
62
篠田節子らしくジメジメした話。2018/09/27
hrmt
43
篠田作品8作目。やっぱり篠田さんは上手い‼︎と感嘆。怖いぐらい圧倒的なリアリティを伴って迫ってくる。出稼ぎに出て行く両親と田舎で家を守る祖母に育てられ、小さくても濃い繋がりこそが安定した幸せなのだと信じた幹郎。けれど、家庭と地域社会と仕事に真っ当に関わりながら倦んでくる日常に反して、妻と娘は外へと世界を広げて行く。家族なら価値観も同じである筈だと私は思えない。相容れない自己実現の欲求は、どちらかが無理に抑え込んだ時に心の底に澱のように積もって歪んでいく。家族だからこそ、認め合っていく覚悟が必要なんだろう。2017/07/26
クリママ
37
カバー絵は一頃の恩田陸の本っぽいけど、全く違う内容(あたりまえ)。「日本という国は、大切なものを壊しながら、無意味な発展に向かい、国民を駆り立ててきた。」子供時代の体験から、地域に根づいて家族とともにより人間らしく生きていく生活を選択した父親。「こんな結婚式はない、恥ずかしい。」と喚くおばあさん。昔はそうだった。時代による価値観の変化。自分の信念が妻や娘に負担になっていく。それにしても、公園での事件を娘はどう思っているのだろう。他人事として痛みも感じないような人が次世代を作っていくことに恐ろしさを感じる。2016/11/19
-
- 電子書籍
- HERO―アカギの遺志を継ぐ男―10 …




