内容説明
犯人逮捕は事件の終わりではない。そこから始まるもうひとつのドラマがある。―息子を殺された男が、犯人の自供によって知る息子の別の顔「真相」、選挙に出馬した男の、絶対に当選しなければならない理由「18番ホール」など、事件の奥に隠された個人対個人の物語を5編収録。人間の心理・心情を鋭く描いた傑作短編集。
著者等紹介
横山秀夫[ヨコヤマヒデオ]
1957年東京生まれ。上毛新聞記者を経て、91年『ルパンの消息』が第9回サントリーミステリー大賞佳作に選ばれる。98年「陰の季節」で第5回松本清張賞を受賞。2000年「動機」で第53回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
293
表題作が印象に残りました。読み進めるうちに「今回は勝たせてもらったよ(=犯人はわかっちゃったよ~♪)横山さん!」、と思ったら最後に軽く転がされ、全く相手になってなかったことを改めて思い知らされました(泣)。しっかし、何ともエグイ小説で、切なさを超えた境地に陥りました。おそらく、登場人物の年齢がことごとく近いのでとても他人事のようには思えなかったのではないかと。2022/11/09
zero1
286
事件は容疑者の逮捕で終わらない。その奥にあるドラマを元記者の横山が描く重苦しい短編集。「真相」は息子を殺した容疑者が逮捕される。だが別の事実が判明し愕然とする父親。村長選挙に挑んだ「18番ホール」の緊張感。「不眠」はリストラの現実と犯罪に隠された事実。「花輪の海」は大学の体育会でありそうな話。「他人の家」には圧倒された。前科者の厳しい現実を描いているが、ドアの向こうに別の宇宙があり、そのドアを開けるとまた別のドアがある。何層にもなった構成は巧いし見事。300ページを超えるが再読でも夢中になって読めた。2019/03/09
yoshida
279
久しぶりに読んだ横山秀夫さんの作品。短編5編からなる作品集。登場人物それぞれの抱える事情から織り成す濃密な人間ドラマが堪能できます。逃げたい事柄、隠したい事柄、消してしまいたい事柄。一度は願望をかなえたはずが、そこには再び波乱がある。主人公たちの焦燥、希望、絶望などの様々な感情が丹念に描かれており、実に読ませる。横山秀夫さんといえば警察モノの印象が強いが、本作では警察モノ以外も収録。共通して言えることは濃密な人間の心理、心模様が実に丹念に描かれることだと思う。他作品も楽しみに読んでいきたい。2018/04/15
hit4papa
198
本作品は、著者のお家芸(?)の警察小説ではありません。しかしながら、焦燥感を伴った苦悩という”横山秀夫らしさ”は健在です。むしろ、警察という一般には馴染みのない世界の枠組みをとっぱらったがゆえに、真に迫っているように思います。「真相」は苦悩の末の涼やかさ、「18番ホール」はグイグイ畳み込んでくる”らしさ”、「不眠」は再生(オチはありがちなれど)、「花輪の海」は解き明かされた真実の悲哀、「他人の家」は泥沼の苦境、を感じます。ラストにこの作品をもってきたからか、全体が暗いトーンになってしまったように思います。2019/10/31
またおやぢ
194
真相を知ることは、かくも息苦しく且つ切ないものか。目の前で起きている事柄は必ずしも真実ではなく、人間の心の動きを解きほぐしたその先にこそ真実が浮かび上がるが展開は流石。2014/06/21