内容説明
標高五百メートル、のどかで風光明媚な高原の町・紫野で、一人の経営者が遺体となって発見された。自殺か、他殺か。難航する捜査を嘲笑うように、第二、第三の事件が続けざまに起きる。その遺体はみな、鋭く喉を掻き切られ、殺人犯の存在を雄弁に物語っていた。“霧”のようにつかめぬ犯人に、紫野でただ一人の警察官・上松五郎が挑む。東京の事件との奇妙な符合に気づく五郎。そして見えてきた驚くべき真相とは―。
著者等紹介
池井戸潤[イケイドジュン]
1963年岐阜県生まれ。慶応義塾大学文学部社会学科、法学部法律学科卒業後、旧三菱銀行入行。95年に独立、コンサルタント業と並行してビジネス書を執筆。98年『果つる底なき』で第四十四回江戸川乱歩賞を受賞、銀行ミステリーという新分野を切り拓く
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
167
池井戸潤さんの珍しく田舎を舞台にしたサイコ・サスペンス本格ミステリの秀作ですね。本書は人気作家の池井戸さんには稀な唯一の絶版本になっていて実は入手に少しだけ苦労しましたね。痛快なエンタメが持ち味の著者らしくないシリアスなサイコキラー・サスペンスは逆に地味な印象を与えますね。何人の死者が出たのか不明な程の大量殺人の血塗られた残虐シーンですが不思議と恐怖感が込み上げないのは著者の冷徹な筆致の故でしょう。最終5頁ギリギリまで意外な犯人を伏せる演出は心憎いですし巡査の五郎と善良な娘・多英が幸せになれてよかったね。2019/11/22
じいじ
117
池井戸作品にハズレなしを自認して読み続けているが、この作品は全く知らずにB/Oで目にして入手した。2002年の刊とあるから初期の作品で、しかも田舎を舞台に連続殺人事件が起きるミステリー仕立ての作品に興味を寄せて読んだ。結論は、ミステリー作品としては失敗作だと思う。ミステリーの緊張感、わくわく感が湧いてこないのだ。池井戸小説の盤石の地位を築いた会社経営・銀行融資、人間ドラマの面白さの片鱗はうかがえたので良しとしたい。2017/02/28
ダイ@2019.11.2~一時休止
110
殺人のある本格ミステリー。ちょっと犯人の動機に納得できないがそれなりに面白かった。2014/04/25
ふじさん
96
のどかで風光明媚な高原の町・柴野で、一人の経営者が遺体となって発見された、自殺か、他殺か、難航する捜査が続く中で、次々に殺人事件が起こる。遺体は、皆鋭く喉を掻き切られて、殺人犯の残虐さが浮かび上がる。捜査が進まない中、柴野でただ一人の警察官・上松五郎が、真相に追及に挑む。柴野の住む人々の様々な人間模様が絡み合い、サスペンスの闇は深まり、闇サイトの存在や東京の事件との関連が次第に明らかとなり、思わぬ展開で物語は終焉を迎える。池井戸潤には珍しい、ミステリーの要素いっぱいの作品で最後まで楽しませて貰った。2023/07/26
タイ子
71
池井戸さん、初期の頃のミステリー作品。珍しいと思い興味津々。爽やかな高原の町で殺人事件が起き、それを取材にやってきた記者たちも殺され、小さな町が大騒ぎ。駐在所の警察官が調べていくうちに5年前の東京で起きた連続殺人事件との関係が見えてくる。誰が、何のために?犯人をミスリードしようとする著者の思いが伝わって来始めた時からちょっと下降気味。途中までは面白いんですけどね。犯人の動機が弱すぎる、無理がありすぎる。全ては霧の中?! 池井戸さんの企業もの、金融ものは最高なので、これからもそちらで楽しませていただきたい。2018/10/12