出版社内容情報
西尾 元[ニシオ ハジメ]
著・文・その他
内容説明
リストラ後、家賃滞納のアパートで凍死(50代男性)、独り暮らしの自宅で熱中症により死亡(70代女性)、認知症の妻を介護入浴中に溺死(80代男性)…老いや貧困が“悲しい死”に直結する現実。
目次
はじめに ある女性の遺体をめぐる謎
第1章 貧困の死体
第2章 孤独の死体
第3章 老いの死体
第4章 死後の格差
第5章 解剖台の前から
第6章 事件の死体
第7章 幸せな死体
おわりに 格差の中にある死
著者等紹介
西尾元[ニシオハジメ]
1962年、大阪府生まれ。兵庫医科大学法医学講座主任教授、法医解剖医。香川医科大学医学部卒業後、同大学院、大阪医科大学法医学教室を経て、2009年より現職。兵庫県内の阪神地区における6市1町の法医解剖を担当している。突然死に関する論文をはじめ、法医学の現場から臨床医学へのアプローチも行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ねこ
138
法医解剖医の筆者が過去20年、司法解剖(犯罪捜査を目的として行う)と承諾解剖(死因究明を目的として遺族の承認のもと行う)に従事した内容です。まず遺体の全身を眺めた後、表面をくまなく観察する。そして皮下組織を丁寧に切り開き頭蓋骨を切開し、脳や心臓、胃、肝臓、腸など全ての臓器を体外に取り出して観察しなければならない。その死因が明らかでも老若男女全て同じである。…私は死後、解剖されるというのはショッキングな事だと実感しました。まさに死体格差!司法解剖医にはお世話になりたくありません。解剖された10%は身元不明。2023/07/01
kinkin
93
著者は法医学者。多くの解剖例から死因を書いている。その死因もいまの日本で様々な課題となっている「貧困」「孤独」「老い」が背景になることが多いという。貧しさで食べることが出来ず通常の気温なら死に至ることも少ない凍死も栄養不良のもとではあっけなく起こること。リストラで無職になり人知れず病死、老老介護で夫婦が入浴中に夫が溺れても認知症の妻がそれを知らず親族に発見されたケース。死体からみるこの国の「格差」が伝わってくる。ひとごとではない「死」が身近に増えていることを知った。図書館本。2017/05/09
どんぐり
77
事件の真相ではなく、「なぜその人は死んだのか(死の真相)」を解剖台の上の遺体と向き合いながら“死因を突き止める” 法医解剖医。孤独死や自殺、身元不明の死体、“普通でない”状況で亡くなった異状死からみえてくる死体格差は、「貧困」「老い」「孤独」「事件」の死体が語る日本社会の陰の部分だ。都道府県ごとに異なる法医解剖の実施率や、気温の高い時期の腐乱死体、焼死した人の気管の中の生活反応、両側性の死斑、窒息死した遺体の口とおしりの特徴的な所見、遺体の腐敗していくときのカスパーの法則など勉強にもなる。2018/01/22
oldman獺祭魚翁
61
図書館本 著者は兵庫医科大の法医学教室の教授 当然多くの不審死の解剖を手掛けている。その経験の中で感じられた事や法医学者としての現在の司法解剖に対する意見も含めた物が本書に著されている。多くの遺体を解剖していく上で感じる貧困・孤独・老々介護など現代の社会問題が透けて見える。生活環境や経済的格差も有るが、記されている解剖率の地域格差も驚くべき物がある。最多の神奈川県が39.2%なのに対し最下位の広島県は1.5% 確かに司法解剖等の費用は各自治体の予算と関わるらしいので、この様な格差が生れるようだ。2017/06/01
ビブリッサ
61
平等に訪れるが公平ではない死。法医学教授の著者が携わってきた数々のご遺体から浮かび上がってくるのは「総中流」では決してない日本の現状だ。静かに分け隔てなく検死をされているのが、丁寧な文章から解る。「貧困が間接的死因の人は大抵痩せていて風呂にも入っていないであろう不遇な環境が直ぐにわかるが、彼らの遺体の臓器は驚くほど綺麗であるのに、贅沢な食生活をおくってきたであろう裕福な方のソレは腸や腎臓、心臓や胃に至るまで黄色い脂肪がべっとりと付着していることがある。」この文章に著者の精一杯の警鐘を感じる。2017/05/27