出版社内容情報
風汰が中二の時に授業の一環で行われた職場体験。「子どもとあそんでいればいいってこと?」と安易な気持ちで保育園を選んだが、のちにまさかの保育士に。しかも勤務先は、夜間保育園。仕事と育児に追われるシングル保護者、自身も一人の母親である保育士、そして自宅を改築して夜間保育園を開いた園長。様々な想いに触れながら、風汰も保育士として成長してゆく。子どもを幸せにするには、親も幸せにならないと――。都会の片隅で、夜の保育園が灯す温かな光を描いた物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
itica
59
「天使のにもつ」の続編になるのだけれど、前作は児童書だったがこちらは大人向けだと思う。職場体験を保育園で過ごした風汰が大人になって、夜間保育園の保育士として働いている。夜間保育を利用するということは、それだけ切実な事情がある。園児と親、園長、保育士それぞれの立場で描かれた5編は考えさせられることが沢山あった。子供は家庭だけでなく保育園や学校、地域が一緒になって育てるものだ。しかし親が積極的に他人を頼るのはなかなか難しい。夜間保育園が親子の避難所になるのであれば、必要な場所だと思う。 2025/06/02
sayuri
28
『天使のにもつ』続編だが、前作未読でも問題ない。四歳の娘を一人家に残し、夜の仕事に出る母親。育児に疲れネグレクトをする母親。家庭の数だけそれぞれに事情があることは理解出来る。それでも読みながら怒りで胸が苦しくなる。酷い目に遭いながらも真っ直ぐな愛情を母親に向ける子供達。その純真な心に何度も涙が込み上げ、親と子の両方が幸せになれる道はないのか考え続けた。本作では救世主となる夜間保育園が登場し救われる。だが現実に育児に行き詰まり助けを求めている人は数多く存在するだろう。安心出来る居場所の必要性を痛切に感じた。2025/06/18
まる子
25
思わず泣いてしまった前作『天使のにもつ』(2020年 青少年読書感想文全国コンクール 課題図書)の斗羽風汰が大人になり保育士として帰ってきた!認可外「すずめ夜間保育園」に通わせる親は何かを抱えながらも子どもを育てている。昼間は良くて「夜間」に子どもを預けると周りの目が変わるのは何だろう。この夜間保育園ができたのは鈴音園長の経験があったからだ。子どもは信頼できる大人がいて、愛されていることを感じて幸せになる事ができる。風汰か書く連絡帳や日誌は上手いとは言えないかも知れない。でも、幸せを願う気持ちは充分ある!2025/06/10
toshi
12
夜間保育園を舞台にした連作短編集。 重いテーマの物が多くて色々考えさせられたりするけれど、どれも綺麗に纏まっているので(ちょっとうまく纏め過ぎな気もするけれど)深刻にならずに済む。 第二章で登場した林田律子は斗羽楓汰のその後のキーパーソンになると思っていたけれど再登場しなかった。 彼女は何の伏線でもなかったのか続編が有るのか、私の考え過ぎか・・・。2025/06/15
雪丸 風人
12
支え合う気持ちを呼び起こす物語。気高い意識のもとで運営される夜間保育園を舞台に、学生っぽさが抜けない青年保育士や、頼られるベテラン、情の厚い園長先生らが躍動します。お迎えは深夜2時まで、時には朝まででも受け入れる施設はどこか特別。けれど一人ひとりの園児はやはり、当たり前に愛情を欲する小さな存在ですね。元気いっぱいだったり涙に溺れるような姿に触れて、彼らの明るい未来を願わずにいられませんでしたよ。とくに面白かったのは、若々しさが微笑ましくもあるやんちゃ保育士が関わるエピソード。(対象年齢は13歳以上かな?)2025/05/21
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