出版社内容情報
私たちが日常で交わす何気ない言葉、「大丈夫」「ごめん」「もういいよ」「なんで?」「ありがとうね」などのひとことをテーマに綴った短編を収録。孤独や寂しさを抱える現代人の心を掬い取りながら、ラストにはほのかな希望をそっと提示してくれる物語。歌人としても活躍する著者の、言葉のセンスがきらめく12編。装画を手がけた人気イラストレーター、三好愛氏の挿絵が彩りを添える。
内容説明
夫に抱えている秘密を言い出せない主婦。わかりあえないままだった老母の葬儀に向かう中年の娘。高校生の娘に弁当を作り続けるシングルファーザー。元担任教師に強引に家に誘われた教え子。真夜中のニュータウンで出会った大学生と若い母親。「言葉」がつなぐ、それぞれの想いとは?ごめん、ありがとう、きれい。なんでもないひとことが、孤独を抱えるひとりの胸を照らす。歌人・東直子にしか描けない!「言葉」がもたらす小さな奇跡を見せてくれる短編集。人気イラストレーター三好愛の挿絵付き。
著者等紹介
東直子[ヒガシナオコ]
1963年広島県生まれ。歌人・作家。96年「草かんむりの訪問者」で第7回歌壇賞受賞。16年、小説『いとの森の家』で第31回坪田譲治文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
159
生きているといろんなことがあって、思い悩んだり、地団太踏んだり、まぁほんとに・・だけど、たいしたことはないんだって。そんな気持にさせられる短編12話。東さんの作品はなぜかそこだけ空気が違うと言うか、温度が違うと感じる。今回もそうだ(そう感じるのは私だけかな?)装画や挿絵がそこはかとなくしっくりくるし、タイトルもまたストンと腑に落ちる感じ。それが私の感じる東さん。2023/10/09
ちょろこ
123
12の小さな時間の物語の一冊。想像よりもちょっとシビアな暗さを纏った感じだった。まさに日陰でひとり膝をかかえているような小さな時間。その時間をごくありふれた言葉と共に描いた小さなドラマって感じかな。そのありふれた言葉たちがいつも以上にパワーを持ってキラキラと陽の光のようにひとりの心を包み込んでいく感じが良かった。日陰から日向へ…日向なら膝をかかえていてもどこか希望を感じられる。そこからゆっくり…ね。そんな優しい導きとささやきが聴こえそう。一人、独りじゃない。ひらがなの"ひとり"の優しく柔らかい表現も良い。2023/12/06
シナモン
107
人と人をつなぐのにやっぱり言葉は大切。淡々としたなかに切なさ、哀しさ、穏やかさ、温かさ、いろんな感情がつまった短編集でした。ふわふわしててなんとなくとらえどころのない感じの絵も素敵。2023/12/15
やも
88
優しさを勘違いしてる人に答える「大丈夫」言って欲しかったし言いたかった「ごめん」人と距離をとってきた自分にかけられた「覚えてる?」勝手な同情をして欲しくない娘の「もういいよ」家族が好きだからずっと家にいたい娘の「なんで?」認知症のおばあさんとの出会いの「つれていって」間違い電話から久々の再会の「ありがとうね」父親の忘れ形見の「生きてる」嘘だけど本物の家族ごっこの「待ってた」等々、なんでもないような台詞のタイトルがいいかんじ。シュワッとピリッとグビッといっちゃう炭酸のような短編12話。どれも面白かった!2024/05/29
ままこ
84
不安や孤独を抱え、普通ではないと自覚する人たちの心の機微を描いた12編の物語。良かったのは、父親と娘のやりとりが微笑ましい「もういいよ」、偶然の出会いが心を解き放つ「つれていって」、お人形と話すおばあさん「話して下さい」が心に残る。“ひとこと”に込められた想いが共鳴し、全てが解決とはいかないけど、踏み出した先を照らしてくれる。ひとりひとりに寄り添うちょっと不思議な三好さんの装画も作品にぴったり。切なさの中に温かさが沁みる読後感。2023/11/23