出版社内容情報
嵐の私雨邸に取り残された11人の男女。資産家のオーナーは密室で刺殺され、世にも珍しい〈探偵不在〉のクローズド・サークルが始まる。館に集ったのは怪しい人物ばかり。いったい誰が犯人を当てるのか。各人の視点からなされる推理の先に、思わぬ悲劇が待っている。
内容説明
たまたま館に集ったはずのメンバーに意外な関係性が。それぞれの視点から語られる事実を統合すると犯人がわかる新感覚ミステリー!
著者等紹介
渡辺優[ワタナベユウ]
1987年宮城県生まれ。大学卒業後、仕事のかたわら小説を執筆。2015年に「ラメルノエリキサ」で第二八回小説すばる新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
358
クローズドサークルで起きる密室殺人事件にダイイングメッセージの謎と古典本格ミステリの趣向がてんこ盛りに詰まったミステリ愛好家には堪らない魅惑の一冊です。被害者は当主の金持ちの老人で、家族達と招待客を含めた容疑者は10人です。著者は大学のミステリ同好会二人の内のA二ノ宮(男)、B雑誌編集者の牧(女)、C被害者の孫の梗介(男)の三人の視点による語りで進行し、時々X名でヒントをくれます。本書の特長は途中で素人探偵が登場して考えを述べる多重解決の趣向ですが、皆さんが自信満々に語る推理がことごとく的外れで自慢の鼻を2023/05/21
麦ちゃんの下僕
185
面白かったです!…ただし、僕の期待とは全然違う方向で(笑) (主に)A・B・C3名の視点が頻繁に入れ替わるという手法は、志駕晃さんの『スマホを落としただけなのに』等でも用いられている手法ですし、結果的にミステリーとしては“あのパターン”のバリエーションですし…終盤の多重推理の既視感も含め、帯の“新感覚ミステリー”という言葉に期待すると物足りなさを感じてしまいます。一方、キャラクター小説としてはかなりハイレベルですね!特に一条&二ノ宮…“江神&アリス”的関係への期待をここまで見事に裏切ってくれるとは…(笑)2023/06/10
yukaring
116
名探偵不在のクローズドサークル。各人の視点から語られる事実から真相を紐解いていくタイプのミステリは自分も推理に参加しているような感覚でとても楽しい。嵐の土砂崩れで孤立した別荘と閉じ込められた11人。絵に描いたような密室で次々と殺人が起こるが名探偵がいない?!ひと癖もふた癖もある登場人物達の推理合戦はかなり突っ込みどころ満載でユーモア満点。主に3人の視点から事件は語られるが、同じ事実を多面的に見る事ができるのはとても新鮮。ミステリ同好会の会長の「ダイイングメッセージすな」という関西弁のコメントはかなり名言。2023/07/30
雪紫
96
「ここまでに住人全員が、一つずつ嘘をついている。」クローズドサークルな館で起きた当主殺害事件。語り手でさえ、言い落とし疑惑ある中それぞれの視点からあらわになる「犯人」と、探偵役は?探偵役不在と個性派キャラ揃いの中、王道の殺人と多重推理。動機やその後に明らかになった展開は思わず最初から読み返して確認したくなる。ミステリ定番なそれを何故強調するのか、が何よりストンとなってニヤリとさせられるが・・・二ノ宮くん、君結構危ない子なのでは(後梗介さんは生活大丈夫な気がする)?2023/06/10
萩
93
オモロイ。古今東西ミステリーを読む人は、どこかで物語にサプライズを求めてしまうのが本能だろう。この作品は設定、犯人、動機、これといって珍しくない気がするが、ある一点のみで「えっ!?」と思わせてくれたので満足。いわくつきの豪奢な館で老主人が殺害された。土砂崩れによるクローズドサークルが発生し、犯人は館に残る誰かに絞られる...とストーリーは王道。探偵気取りのサイコパス味のあるミステリ馬鹿のヘッポコ野郎が本当にイライラしたが終盤にこの気持ちは何となく有耶無耶になった。既読の渡辺優さんの作品では一番良かった。2023/09/10