出版社内容情報
いつもニコニコほっこりさせる笑顔の普通のおばさんなのに、鮨を握らせたら銀座の一流職人も顔負けの腕前。自分の店は持たず、間借りで鮨屋を開く雅代。そんな彼女のところには悩める若者や困りごとが舞い込んでくる――。鮨だけではなく、人の心と胃袋も握る雅代さんの魅力あふれるハートウォーミング鮨小説。
内容説明
自分の店を持たず、間借り営業を信条とする雅代さん。いつものほほんとしていて、ニコニコ笑顔を絶やさない一見、普通のおばちゃんだが、鮨を握らせたら銀座の一流店も顔負けの腕前。しかも、新鮮で貴重なネタを仕入れる人脈ももっている。そんな雅代のところには、間借り先の料理人や悩める若者から相談や困りごとが舞い込んでくる―。鮨だけではなく、相手の胃袋も心も握る雅代さんの魅力あふれるハートウォーミング鮨小説。
著者等紹介
原宏一[ハラコウイチ]
1954年長野県生まれ。茨城県育ち。早稲田大学卒業後、コピーライターを経て、97年『かつどん協議会』でデビュー。書店員の熱心な応援により、2001年に文庫化された『床下仙人』が、07年にベストセラーに。同書は啓文堂書店おすすめ文庫大賞にも選ばれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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machi☺︎︎゛
126
超一流の腕を持ちファンも多いのに店を持たず、間借りを専門とする鮨屋の店主、まさよ。まさよが間借りした店は何かしらの問題を抱えて崖っぷちの状態だった。そんな時にどこからかフラッとやって来て美味しい鮨を握る。時には突き放したり厳しい事もずばっと言う。だけど根底には人と食べ物を愛するまさよの愛情がたっぷりだからそうゆうのはちゃんと伝わるんだなと温かい気持ちになった。大好きな「佳代のキッチン」にも似ててとても良かった。2023/03/20
アキ
123
「商売ってもんは自分が儲けることだけ考えてちゃダメだ。店も客も地元も取引先も産地も、みんなが幸せになってこその商売だ」人形町、金沢、富津市で間借りで鮨屋をしてきた雅代の父親の言葉。第一貫バスクの誓い、第ニ貫能登栗の声、第三貫四方田食堂、どの話も江戸の人情噺のよう。いつも雅代と彼女の握る鮨が潤滑油になっている。「仕事って日々悩み続けることだと思うのね」でも失敗してもいつでも変われる。「そういうのって期間や時間じゃないのよ。その人が何に気づけるか、それだけなの」まさに現代によみがえる江戸前の屋台鮨ですな。2023/03/26
名古屋ケムンパス
121
ほっこり系お仕事小説です。既存飲食店の空き時間を間借りして営業する、銀座の一流店の腕をもつ流浪のおばちゃんすし職人の雅代さん。失踪の夫に見切りをつけ、下町の鮨屋で修業し間借り鮨を始めます。新鮮な鮨ネタは、それまでに築いた貴重な人脈を活かして仕入れます。彼女はこの江戸前の鮨でひとの胃袋だけでなく心をも掴んでしまいます。浮き沈みの大きい飲食業界の悩みを解決すべく、彼女はにっこり微笑んでそのすご腕を振るうのです。2025/01/03
Karl Heintz Schneider
118
「店が空いている時間だけ間借りさせて。」突然、店に飛び込んできた小太りの中年女性に面食らう店主。その時間を利用して江戸前鮨を売りたいと言う・・。半信半疑で店を貸したら、とんでもない腕前で。一見どこにでもいる普通のおばちゃんなのだが、その腕前は本物で宣伝をしなくても遠くから馴染み客が食べにくる。一番の特徴はその人柄「店を拡げたいとか、大儲けしたいとか、そんな野心はないの。ただ、のほほんと笑いながら生きていければ、それでいいの。」そんな彼女の欲のない姿勢を目の当たりにして店の問題がいつの間にかなくなっている。2023/03/16
やも
102
間借り鮨を風来坊のように営むまさよさん。ちょっとマカンマランみたい。人の悩みに添えられる美味しい料理と、気づきをくれるさりげない寄り添い。袖触れ合うも他生の縁。なにも押し付けがましくないのに、心にずっと残るような、まさよさんの生き方指南。コロナ禍にあえぐ飲食店の試行錯誤もリアリティあり。舞台はバスク料理、老舗菓子店、老夫婦の食堂と読んでて飽きない。追い詰められてど根性パワーを出す話は大好き。美味しいを追求する話も大好き。狡い逃げ道から明るい道へハンドル切る話は、もっと好き。2023/06/19