出版社内容情報
蓮見貴斗と尚斗は一卵性双生児。弟の尚斗は人気俳優だったが、遺書も残さずに自殺した。葬儀を終えて数日後に尚斗のスマホが見つかり、貴斗が電源を入れると顔認証を突破できてしまう。未読メールには礼文島行きの航空券が届いていた。自殺したのに、どうして旅行に行こうとしたのか。その答えを知るために貴斗は旅立つ。人気絶頂で自殺した愛する弟は何に悩んでいたのか。止められなかった自らの後悔を胸に世界を旅する貴斗。「生きること」と「死を受けとめること」の意味を問う、感動のロードノベル。
内容説明
遺書もなく自殺した双子の弟の携帯。同じ顔を持つ兄が顔認証を突破すると、礼文島行きの航空券を見つけた。そこに弟の「死」の答えはあるのか―。マルタ島、台湾、ロンドン、NY、南米、東京、青春小説の名手が紡ぐ「喪失と再生」の物語!
著者等紹介
額賀澪[ヌカガミオ]
1990年生まれ、茨城県出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。2015年に『屋上のウインドノーツ』(「ウインドノーツ」を改題)で第22回松本清張賞を、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。16年、『タスキメシ』が第62回青少年読書感想文全国コンクール高等学校部門課題図書に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
316
残された兄・貴斗が、弟・尚斗の死の理由を求めて世界各地を旅する様を描くこの作品。『順風満帆に見えた弟は何故自殺したのか?旅の果てにその答えは待っているのか?死によって道を違えた双子達のその後を、ぜひ見届けてください』とおっしゃる額賀さんが描くこの作品。まるで旅行記の如く鮮やかに描かれた世界各地の風景と、現地で貴斗が巡り合っていく人々の優しさを感じるこの作品。『世界の美しさ』を知り、『尚斗の死を俺で飾ろう』と前に進んでいく貴斗の姿に、身内の死を乗り越えて生きていく人のたくましさを感じた素晴らしい作品でした。2022/03/21
fwhd8325
180
目次を見ると国内、海外の地名が並び、タイトルからロードスタイルの物語かなと思っていました。ある種ロードスタイルではあるけれど、内容は意外にヘビーなものでした。この小説が一人の人生のようになかなか演出に凝った作りになっています。個人的には、前半はすらすら読めましたがエピローグまではやや長く感じました。2022/04/09
のぶ
179
兄弟の絆について考えさせられた作品だった。物語の冒頭で25歳の人気俳優、蓮見尚斗が自殺したという速報記事が出るところから始まる。尚斗は一卵性双生児で、兄の貴斗がいた。尚斗のスマホが見つかり、貴斗が電源を入れると顔認証を突破できてしまった。メールには礼文島行きの航空券が届いていた。貴斗は尚斗の生前にゆかりのあった場所への旅に出る。旅先で尚斗の足跡を見つけられるのか?貴斗は旅先でいろんな体験をするが、それは尚斗の死の答えではなく、結局は自分探しなのだと思った。また観光案内のような部分も感じとれた。2022/01/14
まちゃ
163
身近な人の自殺を題材に残された者の喪失感を描いた物語。どんな理由にせよ残された者の苦しみが消えることはない、と思わずにはいられませんでした。平凡な会社員の蓮見貴斗と人気俳優の尚斗は一卵性双生児。ある日、弟の尚斗が遺書を残さずに自殺した。人気絶頂で自殺した尚斗は何に悩んでいたのか。彼を思い止まらせることは出来なかったのかという思いを胸に貴斗は、尚人の足跡を辿って日本、世界を旅する。旅を通して、貴斗は尚斗の死を受けとめていく。2022/03/26
おしゃべりメガネ
161
う~ん、スゴい。何がどうと言われても全然うまくレビューで伝えられない。これまで額賀さんの作品は大体読んできましたが、ちょっとまた別の次元、レベルへ到達したのではないでしょうか。俳優の双子の弟を自殺で失った兄は弟のスマホに残されたメッセージから『礼文島』へ向かうことに。そこから始まる不思議な人と人との縁が紡ぎだす旅物語。なぜ弟は亡くなったのか、謎は明かされるのか、先が気になってページを捲る手が止まらずイッキ読みでした。主人公とかかわる登場人物の皆さんがそれぞれとても魅力的で、なんとも言えない読後感でした。2022/03/27