出版社内容情報
母親をアルコール依存症の男に殺された過去を持つ史哉は、がんで余命半年の宣告を受け、失意のどん底にあった。そんなとき、街で偶然服役後の加害者を見つけてしまい、復讐を誓う。だが、兄の臣吾はボクシングの世界戦を目前に控えていた。兄に迷惑をかけず、死ぬ前に復讐を果たす――それは完全犯罪しかない。命の重さ、復讐の是非を問う慟哭の社会派ミステリー。
内容説明
ある日、史哉は街で母を殺した男を目撃してしまう。15年前に母を刺殺した犯人が社会復帰していたのだった。史哉の中に、かつて捨て去ったはずの憎悪が甦るが、間もなくして告げられたのは、がんによる余命宣告。だが、このままでは死ねない。史哉は自分を縛りつける鎖を解き放ち、憎き男を殺すことを決意するが、彼には守らなければならない未来がある。最愛の妻のため、ボクシングの世界戦を控える兄のため、残された道は完全犯罪しかなかった―。
著者等紹介
久和間拓[クワマタク]
1990年埼玉県生まれ、慶應義塾大学卒。2016年「エースの遺言」で第三八回小説推理新人賞を受賞。他の著書に短編集『エースの遺言』がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タイ子
89
15年前に母親が通り魔に殺された兄弟。兄は途中で夢を諦め弟と共に生きてきた。社会復帰した犯人を偶然目撃した弟・史哉。犯人の男に対して沸き上がる憎悪と復讐心。奇しくも史哉に突き付けられたガンと余命宣告が彼の復讐心に火をつけた。完全犯罪を目論んで計画を立て始める。一方、兄は夢だったボクシングの世界戦に向かって練習を開始。物語の殆どを費やす史哉の殺害計画。止めなよ、復讐して何が生まれるんだ、後に残された者はどうするんだ。イライラが交錯しながらも読む手が止まらない。兄弟の絆にウルっとしながら復讐の意味を考える。2022/06/06
それいゆ
30
この作品が「小説推理新人賞」だと思い込んで読み進めました。「エースの遺言」が新人賞受賞でしたか。初の長編小説だそうですが、言われてみればそんな感じがします。なかなかの秀作ですが、どこか物足りなさがあります。兄弟の絆のようなものがこの小説の重要な部分を占めているのでしょうか?もっとそれが前面に登場していていればさらによかったのに!が最大の読後感です。2021/11/12
海の仙人
26
母親を滅多刺しにして殺した男は赦すことができない。出所した男を殺すため完全犯罪を目論む文哉。がんによる余命宣告を受け周到な準備を進めるうち、兄の世界戦タイトルマッチが近づき、妻の妊娠が判明するが犯人への憎悪は消えることがなく…。もっと悲惨な展開を予想したのですが…。2021/11/22
けんたん
4
母親を殺された復讐。相手は少ない期間の収監後、何食わぬ顔で生活している。それを目の当たりにした時の殺意。固くきつく縛り付けていた鎖が弾け飛ぶ。が、自分だけの問題では無い。家族がいる。だからこその完全犯罪を。 葛藤がストレートに伝わる作品でした。真帆、潤さんには幸せを与えてほしい2022/05/22
Snowy
2
設定は面白かったんだけど、段々と展開が残念な感じ(雑?)になってしまった。健太との遭遇も回収されず。今後に期待。2022/01/02