出版社内容情報
明治五年(1872年)。武士身分の廃止に帯刀の禁止――近代化が進む明治の世は、武士という存在を置き去りにして進みつつあった。娘の野茉莉とともに京都に移り住んだ甚夜は、昼は蕎麦屋を営みながらも、夜は相も変わらず鬼退治を生業にしていた。新時代になったものの、鬼の討伐依頼は増え続けるばかり。その陰には、どうやら「マガツメ」なる存在がかかわっているようだが……。大人気和風ファンタジーシリーズの第五巻。切なくも美しい時代の徒花たちの物語。
内容説明
刀を禁じられた新時代、甚夜は相変わらず京の町で鬼を斬り続けていた。物語は新時代へ。シリーズ屈指の人気を誇る明治編がいよいよ開幕!
著者等紹介
中西モトオ[ナカニシモトオ]
WEBで発表していた小説シリーズ『鬼人幻燈抄』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モルク
102
時代は明治に入り、京都で愛娘と蕎麦屋を営む甚夜。時代の変化で、廃刀令のため、鬼と刀で戦ってきた甚夜は生き方、鬼との対峙の仕方も自ずと変わってくる。懐かしい人が登場したり、また未来である現代も絡み目が離せない。「マガツメ」の正体は何なのか、そして妹鈴音はまだ出てこないのか。次作は2月とか。期待が膨らむ。2020/12/24
mayu
76
シリーズ5作目。ひとつの時代が終わり、新しい時代へ。全てが否応なしに変化していく。誰かを守るため、新しい時代を夢見て戦った武士たちは、時の流れとともに、その誇りさえ奪いとられた。受け入れることはできず、鬼に身を堕とす者。友と呼び、無邪気に語り合った日々はもう戻ることはない。それならいっそ、その手でこの苦しみを終わらせてほしい…。出会いのあたたかさや優しさも、別れの切なさや寂しさも。人より長く生きる鬼だからこそ、人より多く知っている。辛い別れがあってもひとつひとつの出会いには意味がある。そう信じていたい。2022/10/09
よこたん
61
“新しいものはいつだって眩しく見えるから、時折目が眩み失われていくものを見失ってしまう。例えば道の端の花。巡り来る時に咲く場所を奪われた花は、実を結ばずに枯れていく。” シリーズ第5巻。人の思いを置き去りにしたまま、変わりゆく時代の波は容赦なく転換を強いる。刀を失うことは、自分の立ち位置を、自分自身を奪われることと同じだった。時が流れても、鬼であるが故に外見は変わることなく、周りの人々だけが齢を重ねていく。寂しくないはずは、ない。「今、幸せ?」の問いに、胸に去来する思いはきっと語り尽くせはしないだろう。2021/02/07
えみ
61
また一つ大切なモノを得て、また一つ失った。江戸から明治へ。移り行く時代の中で過去に置いてくるものが多すぎる。だからこそ今ここに、変わらずあるものが哀しいくらい愛おしい。しかし容赦ない新時代は遂に武士のみならず、魂をも排除する。廃刀令。己の為じゃない、誰かの為に願う幸せは時代の変化と共に、その誰かの幸せの為にいとも容易く裏切られる。絶望は嘗て友と呼び、他愛のない話で笑い合った思い出さえも呑み込んでいった。出会いは別れの為にあるのか。…その出会いは心の優しさを、その別れは人としての強さを。そう信じたい切なさ。2020/10/26
るぴん
57
シリーズ5作目。明治編。帯刀禁止令が廃刀令に代わり、武士が消滅した時代。侍としての矜持を失った人々にとっては、生きるのが辛い時代だったんだろうなぁ。「血刀」の能力を持つ鬼の正体が判明した時は、あまりのショックで愕然としてしまった。甚夜が鬼と知っていたからこそ、鬼になることに抵抗がなかったとは皮肉。それにしても、今回の敵は甚夜にとっても読者にとっても辛すぎる…(T ^ T)兼臣やマガツメの目的と正体も気になるところ。2020/11/13