出版社内容情報
元プロ野球選手が殺人で起訴されたが、ある男の証言が決め手で無罪となった。男の息子はつい最近亡くなっており、息子を安楽死させた疑いで、華岡検事は担当医師を取り調べているところだった。ふたつの事件に違和感を抱いた華岡はさらに捜査を進めた――。終末期医療のあり方を問う、ヒューマンミステリー!
内容説明
思わぬ目撃者が現れ、妻殺しに問われた元プロ野球選手へ無罪判決が下された。有罪を確信していた捜査担当検事の華岡は、控訴を固く誓いながら裁判所を後にする。華岡は別件でその目撃者と再会することになる。目撃者の息子がマンションから墜落し、入院先の病院で死亡していたのだ。家族の依頼で息子を安楽死させた疑いが担当医にかかっていた。二つの事件を調査する華岡は意外な真実に辿りつく―。
著者等紹介
小杉健治[コスギケンジ]
1947年東京都生まれ。データベース会社に勤務のかたわら執筆した「原島弁護士の処置」でオール讀物推理小説新人賞、『土俵を走る殺意』で第11回吉川英治文学新人賞、『絆』で第41回日本推理作家協会賞長編賞を受賞。法廷ミステリー、時代物など、幅広いジャンルで活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちょろこ
143
テーマは終末期医療、の一冊。安楽死事件と、とある殺人事件。この二つの事件に隠された真相を炙り出しながら終末期医療、安楽死について問いかけていく物語。苦しむ患者に対してこの処置は故意か否か…検事が追求していくこの際どい判断には唸らされると同時に重く心にのしかかる。選ばざるを得ない場合、果たしてそれが正解の扉なのか、開けても後悔の扉が待っているのではないか、後戻りできない扉が…。終始そんな思いに囚われた。愛しているからこそ…の対極にある願いに心は振り子のように揺れたまま。涙は出ても答えは出ない。2021/01/27
モルク
108
元プロ野球選手の妻殺害裁判で、突如現れた目撃証言。その人物がメガバンクの融資部長の立場であるという信用性から無罪判決がでる。捜査検事華岡は控訴に向け再捜査していく。証言者の息子の転落事故と担当医の安楽死疑惑。全く結び付かないはずの案件が繋がっていく。そこに剛腕弁護士駒形の影がちらつく。華岡自身の父の安楽死疑惑もあいまって、安楽死の倫理も問う。延命治療の中止と安楽死は別物であるがどこかで確かに繋がっている。患者の意思、尊厳を保つこと…どこまでがどうなのかその線引きは難しい。2021/09/05
ゆみねこ
87
元プロ野球選手の妻殺しと、突然現れた目撃者。目撃者の息子のマンションからの転落と入院先での死亡と安楽死疑惑。無関係に思われた二つの事案を調査する華岡検事。華岡が抱える父の死への疑問。駒形弁護士の悪さが印象に残る。2021/08/15
そら
72
安楽死について倫理観を揺さぶられるミステリー。医師を被告とし安楽死への疑惑を問う事件と、妻を撲殺した夫が容疑者となる殺人事件。どちらの事件も無罪となるが、検事の華岡は何か引っ掛かりがあり、事件を追う。全く接点のない事件がある人物を通して繋がっていく。被告となった山中医師の語る"安楽死"と"延命治療の中止"の倫理的な価値観の違いに混乱する。華岡自身も父親を安楽死で亡くしており、残された母親も余命僅かとなり、治療の選択を迫られる。もし大切な人が痛みに苦しむ時、どう向き合うかはその立場にならないとわからない。2021/07/27
さっこ
68
妻殺しに問われていた元プロ野球選手が、思わぬ目撃者の出現により無罪判決が出た。時を同じくして積極的安楽死させたとして医師が送検されてきた。二つの事件の調査を進めていた検事の華岡は事件が繋がっていることを知る。延命治療、安楽死、人としての尊厳に重きを置いた感じで、謎解きは中途半端な印象を受けました。嫌な弁護士が地団駄踏んで悔しがるところとか見たかったのですが、法廷部分が全然無くて残念でした。2021/04/21