出版社内容情報
美術教師が殺害された事件を追う女刑事。彼女と事件を繋ぐのは、少女の写真をアップしているアングラサイトだった。事件の真相は彼女自身も抱える捻れた愛によることに気づき……。39回小説推理新人賞奨励賞に選ばれた「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」を含む四編を収録した短篇集。謎が解かれた先の、人の感情の揺れを丁寧な筆致で描く期待のデビュー作!
内容説明
娘の裸体写真を遺して死んだ美術教師。事件を追う優希は、ある少女の存在を思い出し―。心に住むのは怪物か、己の本質か?第39回小説推理新人賞奨励賞作品を含むデビュー短篇集。
著者等紹介
木江恭[キノエキョウ]
1988年神奈川県生まれ。上智大学卒業。2017年に「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」が第39回小説推理新人賞奨励賞に選ばれる。『深淵の怪物』がデビュー作となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
187
短編4話。タイトル作はないのだが心の奥を覗いてごらん?と聞こえるようだ(誰の声?)目次のページを捲るとニーチェの言葉にドキリとする。私の心に棲むのは怪物なの?鬼なの?悪魔なの?「絶対いない」と言い切れないのは私だけだろうか(汗)4話とも面白く読んだ。デビュー短編集とのことだが、長編も読んでみたいと思わせる。もう出てるのかな? 2021/04/03
みっちゃん
167
ぞくり、と。穏やかで笑顔を絶やさず、誰にでも優しく。皆の信頼も厚い。そんな表の顔の裏側に隠されたもう一つの顔。酷薄で冷淡、大事なのは自分だけ、利用価値のないもの、ひとは迷わず切り捨てる。かいまみえる人間の二面性、心の闇。が、「私にはそんなものはない!」そう言い切れるひとはどれくらいいるのか。予想外の結末、読みやすい文章、これがデビュー作とは。次も楽しみに待ちたい作家さんだ。2021/03/04
ちょろこ
147
魅せられ、見せられた一冊。楽しめた初読み作家さん。しっかりミステリとして魅せられ、人の怪物なる一面を見せられた作品。まるでドロッとした泥沼の底を掘り返し、ふるいにかけ残った見たくないものをわざわざ見せられたよう。人の持つさまざまな人格。時に真逆とも言える一面を事件の真相として見せられる感覚はザラッとしながらも魅せられる。中でも「さかなの子」が秀逸。どんどんかかる重圧に押しつぶされる様は静かに黙々と読み手の心にも泥沼をつくりあげていくようでゾクッ。自分で怪物を見るよりも人に見せられる方が衝撃は大きい…よね。2021/01/16
タイ子
80
初読み作家さん、デビュー作。まさに人間の心の深淵をのぞき込むような4つの短編ミステリー集。最初の作品からのめり込むような面白さは無いけど、次の作品にいくにしたがって面白いかも、いや面白くなってきたぞと思えた本かも。どれも上手く人間の心の内を描写しながら事件の謎を明かしていく手法なのでジワリ、ジワリと効いてくる。中でも一番好きなのは「さかなの子」。これは上手いなぁって思わせてくれた。デビュー作から読ませていただいたので、今後も応援したい作家さん。次作も期待しています。2020/08/01
さっこ
68
小説推理新人賞奨励賞作品を含む4話短編集で著者デビュー作。人の心理の奥底にある本質を暴き出す。表題どおり心の深淵に怪物が潜んでいる。派手さはないのだけれど、隠しておきたい、気づかずにいたかった、心の醜さが余韻を残しました。2020/11/04