出版社内容情報
昭和30年代の名古屋の繁華街・大須。何でもありのごった煮の街で終戦直後に生まれた碧は母親と二人、つましくも幸せな日々を送っている。将来、映画監督になることを夢見て、アルバイト代で映画館に通う碧。そんなある日、一人の男が母娘の前に現れる――。街を行き交う市電の優しい揺れに乗せて描く、少女のゆるやかな成長物語。
麻宮ゆり子[マミヤ ユリコ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みかん🍊
100
昭和30年代市電が走る名古屋の大須商店街、映画館が沢山あり老人も若者も余所からきた人間も受け入れるごった煮のような街、そこで母と二人長屋で暮らす碧の青春です、子供に愛情を持たない親は現代だけかと思いがちだけど昔は子だくさんで子供は労働力だったり奉公に出したり赤線に売り飛ばしたりお金にすることしか考えていないそんな親も沢山いた、そんな親に愛されない辛い過去を持ちながら碧のために昼も夜も働く母の愛情はや潔さかっこ良かった、そして今も大須商店街は寂れもせずごった煮のように賑わっている。2018/05/16
のぶ
80
自分の住んでいる町が舞台になっているので、興味深く読む事ができた。場所は名古屋の大須。地元では知らない人のない親しみのあるところ。昭和30年代にそこに住む、碧を中心にしたほのぼのとした家族小説。時代は自分の世代より若干昔だが、よく知っているところなので、ノスタルジックな感覚で楽しむことができた。作中これと言って大きな事件が起きるわけではなく、あらすじは書き辛いが、碧と母親、その周辺の人たちの織り成すドラマで碧の成長していく姿は、読んでいて心地の良いものだった。2018/06/30
はる
79
昭和30年代の名古屋。古ぼけた長屋で暮らす母娘ふたりは、周囲の人たちに助けられながら懸命に生きていた…。懐かしい昭和の暮らし。娘の視線から、日々の出来事、悲喜こもごもをノスタルジックに描きます。特に母娘を見守るような大家のおばさんが魅力的。厳しくも温かい彼女とのやりとりは感動的で、クライマックスでは涙を誘います。ラストは爽やか、元気の出る物語。2018/05/29
papako
69
『敬語で~』がお気に入りの作家さん、ラスト1冊。楽しめた!けど、うどん屋さんに入って、チャーハンが出てきて、食べたら美味しかったって感じの『楽しめた』でした。ちょっと期待した感じとは違って複雑。戦後の名古屋、大須という街を元気に生き抜く少女、碧の物語。母娘二人の生活、助け合い、映画、恋に友情にと、戦後の混乱から前を向いて動き出した日本の片隅の、苦しくも素敵な物語でした。『彼方の友へ』に似た雰囲気です。同じ作家さんと言われてもわからないかも。すごく楽しめたんですよ。でもね、次、期待しています!2019/02/07
ぶんこ
55
名古屋の下町大須に暮らす母と娘。終戦直後からの昭和の逞しい暮らしが描かれていました。昼夜掛け持ちで仕事をしながら、夜更けに一人で勉強する母の姿、娘を襲う暴漢に立ち向かう姿、母が実に素晴らしい。その母と娘を常に助けてくれた大家さん。そして町の人々。お母さんと大家さんが素敵すぎて碧さんがかすみました。2018/06/25