出版社内容情報
浮穴みみ[ウキアナ ミミ]
著・文・その他
内容説明
箱館にて洋式帆船造りの名匠と謳われた船大工の続豊治。だがある不運から、船大工の職を離れ、一介の仏壇師として二十年余りを過ごしていた。世は明治へと移り変わり、ひっそりと暮らす豊治のもとを伊豆の船匠・上田寅吉が訪ねる。寅吉との対話により、齢七十を過ぎたその胸に、船造りにかける熱い想いが再燃する。―『鳳凰の船』江戸の残映が色濃い明治初期の函館を舞台に、人々の心情を細やかに描きあげた五編。
著者等紹介
浮穴みみ[ウキアナミミ]
1968年北海道生まれ。千葉大学仏文科卒。「寿限無」で2008年第30回小説推理新人賞受賞。受賞作を収録した『姫の竹、月の草』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
京都と医療と人権の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モルク
86
幕末から明治にかけての箱館の地を舞台に新しい時代へ、新しい地へと変化していく中で生きた人々を描く5編の短編集。さつほろ(札幌)を舞台にした「楡の墓」の箱館(函館)版。異国の人の妻になったり、奉公したりという女たちの話の方が印象的かな。彼女たちの力強さ、そしてそこに垣間見れる日本女性らしい美を感じた。浮穴さんの文章もここちいい。2020/08/16
さつき
76
明治時代の函館を舞台にした短編集。船大工やお雇い外国人の日本人妻など様々な視点から描く草創期の街のざわめきが眩しく、同時に物悲しい気持ちになる作品でした。函館は義父の出身地。いつの日か家族で行ってみたいです。2021/01/08
いたろう
70
明治期の函館を描いた短編5編。(1編は札幌が舞台だが、そこで語られるのは函館近郊の七飯の話)。表題作の箱館型スクーネルと称される洋式帆船を造った船大工、続豊治の他、ブラキストン・ラインに名を残すトマス・ブラキストン、函館港湾改良工事を行い、函館ドック建設地の埋立を行った技師、廣井勇、お雇い外国人のイギリス人ジョン・ミルンと結婚した願乗寺の娘、とね、等々。「内地」に比べて歴史が浅い函館だが、歴史小説の題材になり得るのは箱館戦争だけではない。函館の出身ながら、知らなかった函館の歴史の数々がとても興味深い。2018/01/16
真理そら
60
幕末から明治にかけて変化し続けた函館の人々を描いた短編集。表題作に登場する船大工・上田寅吉は別の作品で読んだのに、その作品を思い出せず、読み返すことが出来ない。自分の記憶力のなさが悲しい。七重村付近を99年プロシア商人ガルトネルに貸与するという契約を破棄するために奔走したことの正しさを自分の中で何度も確認してみる岩村を描いた『野火』が好きだ。2019/06/18
kawa
48
著者の「楡の墓」(維新後の札幌の街づくりを任った人々の群像劇)が印象的だったので、早速に前作的なこちらへ。函館の維新前後の様子がテーマで、早くから開かれていた港湾都市だけに外国人商人・学者も複数登場して国際的話材が中心に描かれる。こちらはこちらで興味深いのだが、ゼロからの街づくりを描いて熱量の多さを味わえる「楡の墓」のほうが好みかも。2020/03/17
-
- 和書
- 国際通貨ポンドの研究