蛇行する月

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  • サイズ B6判/ページ数 188p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784575238358
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

人生の岐路に立つ六人の女の運命を変えたのは、ひとりの女の“幸せ”だった。―道立湿原高校を卒業したその年の冬、図書部の仲間だった順子から電話がかかってきた。二十も年上の職人と駆け落ちすると聞き、清美は言葉を失う。故郷を捨て、極貧の生活を“幸せ”と言う順子に、悩みや孤独を抱え、北の大地でもがきながら生きる元部員たちは、引き寄せられていく―。彼女たちの“幸せ”はどこにあるのか?

著者等紹介

桜木紫乃[サクラギシノ]
1965年北海道釧路市生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、初の単行本『氷平線』が注目を集める。12年『ラブレス』で第1回「突然愛を伝えたくなる本大賞」、13年同作で第19回島清恋愛文学賞、13年『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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yoshida

360
6人の女性達の短編集。話しの軸は高校卒業後に就職した和菓子屋の職人と蒸発した順子。順子が恐ろしいくらいに、真っ直ぐなのだ。20歳以上年齢の離れた「お父ちゃん」と息子の輝との逃避行。故郷である釧路へはもう戻れない。東京の外れのラーメン店に落ち着くも、籍を入れることも出来ない。それでも順子は幸せだと話す。身を粉にして働き、輝を大学に進学させ、苦労のし通しで死期が近付く。輝が羽ばたく姿を順子は見れない。しかし、輝の瞳を通して順子も世界を見るだろう。圧倒的な無償の愛。人は誰かの為にこんなに懸命になれるのか。力作。2017/06/25

さてさて

337
『視点となる人物は1話ごとに変わり、最後までいったときに中心にいた人物が浮かびあがってくるようなお話を書いてみたかった』とおっしゃる桜木紫乃さん。そんな桜木さんの意図した通り、この作品では、中心となる須賀順子の25年の人生を彼女の友人や母親視点で垣間見ることで、『しあわせ』とは何かを考える一つの機会を得ることができました。「蛇行する月」という印象的な書名のこの作品。『窓の向こうには湿原が広がっていた』という北国の自然の描写の中に、静かに地上を照らす月が顔を覗かせる澄んだ空気感が魅力の素晴らしい作品でした。2021/09/20

風眠

276
妻のいる男との間に子どもができ、その男と一緒に逃げた順子。女友達、母親、逃げた男の妻の目線から描かれたオムニバス形式の物語。幸せか不幸かは、自分の心が決めるもの。誰がなんと言おうと、人がどう思おうと、その結果、誰かを苦しめることになっても、自分の心に嘘をつけないのが人間の弱さであり、強さでもあると思う。この物語に出てくる人達を、私は誰も不実とは思わない。蛇行する川を泳ぎ、激流に溺れそうになりながら、必死でもがいている姿に共感する。月は太陽の光があるから、その姿を見ることができる。順子はきっと太陽なのだ。2014/06/02

れみ

226
主人公は高校を出て和菓子屋に勤めたものの不倫の末に生まれ育った北海道を出ることになった順子。でも彼女の一人称で語られるお話は一つもなくて友人とか彼女に関わる人それぞれが主人公のお話のなかで順子の姿が語られるというのが面白いというか興味深い。久しぶりに会った友人に「内臓はぼろぼろだけど目は元気」と語るところにぐっとくる。楽なことばかりじゃなかっただろうけど…ちゃんと幸せだったんだろうと思えてくる。2016/05/08

おしゃべりメガネ

210
う~ん、切ない、儚いなどなど相変わらず‘負’の要素がじっくり練りこまれた桜木ワールドですが、不思議とドコかに希望を見出そうとする展開に読後感は悪くならないです。きっと桜木さんにしか書けない桜木ワールドの基本が本作に集約されているような気がします。円熟とはまた違う確立した雰囲気にシビれてしまいます。桜木さんの描く女性人物たちは本当にたくましく書かれています。多分、ココまでくると共感できる、できないではなく、ただ単純に桜木さんのアートともいえる文章の美しさや物哀しさを存分に味わうのが、ベストなんでしょうね。2014/12/27

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