内容説明
織田信長―。これまでたくさんのエピソードが語られ、評価がされ、読まれてきた戦国武将。その信長に関係する人物を活写することで信長の姿に迫り、信長が彼らにどのような影響を与え、行動の指針になったのかをも描く連作集。
著者等紹介
岡田秀文[オカダヒデフミ]
1963年東京生まれ。明治大学卒。99年「見知らぬ侍」で第二一回小説推理新人賞を受賞。2002年『太閤暗殺』で第五回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。時代ミステリーの秀作を次々と発表し脚光を浴びる。時代小説や歴史小説にも定評がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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そうたそ
36
★★☆☆☆ 織田信長という武将の姿を、その血縁者・家臣・他の武将の視点から描き出す短編集。歴史とミステリを融合させたような作品の多い岡田さんだけに、本作もミステリを思わせる面白い趣向が凝らされているのではと期待してみたのだが、随分と普通の歴史もので、いまいち著者の個性が活かされていないのではと思う普通すぎる内容だった。様々な人物の視点から一人の人物を描き出すという趣向は面白いものの、数多ある信長ものの歴史小説の中では、いずれ埋没していく気がする、これといって面白みの感じられない内容であった。2015/12/30
佐治駿河
33
本書は信長に関係した八名の短編エピソードとなりますが、この短編が歴史の一場面を切り抜いたなら短編の面白さをもっと引き出せたかもしれないが、この短編は各人物のいろいろな時代での信長に対する考えや心持を描いているので、歴史的な背景がある程度理解していないと理解することは難しいかもしれませんね。それぞれの歴史的な場面の説明を詳しく書きすぎても肝心な各々の心理描写の部分が薄くなってしまいますし難しいとは思います。ただし、私のような歴史好きにとっては楽しく読めることも事実です。2024/05/31
二分五厘
9
上杉謙信(敵)・織田信光(伯父)・浅井長政(義弟)・柴田勝家(家臣)・足利義昭(傀儡)・蒲生氏郷(後継者)・織田秀信(孫)・土田御前(母)、の八人から眺めた織田信長という人物。正直人選が何故この人物?というラインナップ感が否めない。間近にいた人物ではなく、ある程度外側から観ていた人物達か。秀信編にいたっては信長本人出てこない。信長に対して自分の思うところ、ある者は魔王、気宇壮大な若輩、利用できるうつけ、冷徹な主人、目指すべき傑物、優しい子と、その評価も定まらずやはり謎。時系列がバラバラなのは意図的なのか。2017/08/30
茶幸才斎
6
破格の武将、織田信長。その姿は周囲にどう映っていたか。越後の上杉謙信はいずれ打ち破るべき小癪な小僧と見なし、叔父の織田信光はただのうつけと侮り、北近江の浅井長政は優柔不断の故に関係を読み誤り、重臣柴田勝家はその一挙手一投足に怯え、将軍足利義昭は憎らしき目の上の瘤と歯噛みし、家臣の蒲生氏郷は秀吉など及ばぬ英雄と讃え、三法師織田秀信はもはやその威光に意味を見出せず、そして生母の土田御前はついに心を通じることができなかった。真に彼を理解できた者は誰だったか? 父、信秀だけが、冥土で一人ほくそ笑んでいるのだろう。2011/08/04
ぶーにゃん@積ん読本解消中
6
信長に影響を受けた様々な者が信長について語っていく連作短編は視点がおもしろく、作者が選んだ人物が秀逸でした。特に秀吉が政権奪取する際に利用した信長の直孫三法師の後身である織田秀信の章が興味深く今川氏真との心情の比較に納得しました。やはり、様々な人物が語る信長像はその時代を突き抜ける異才ぶりを浮かび上がらせるものでした。小説の背景説明が不親切なので戦国時代の知識がないと読み解くのはちょっと難しいかな?2011/05/07