出版社内容情報
戦時中雑誌『文学界』が各界の知識人に呼びかけて行った座談会と、戦後竹内好によって書かれた同名の論文を合本したもの。さまざまな論議を呼んだ前者と、思想そのものの帰趨を丹念に跡づけた後者と、あわせて精神史の重要な資料となろう。
(解題・松本健一)
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
13
昭和の精神史の重大な出来事。前半には、論文がたくさん載っている。こういう難解なものは一遍読んだだけではどうにもならないな。2018/01/21
またの名
13
漱石や鴎外、芥川、谷崎等の純文学は左翼文学でなくとも左翼青年を生んだ退廃芸術なので地獄の火の中に投げ込むべしと訴える文学者。個としての自己の確立を求める欧米の風土がウザくて帰国した、と告白する音楽家。主体的無という無我の境地に至り私を滅した国民各人が、全体国家に帰一する道徳を唱える哲学者。対米開戦を機に近代を問い直すため開かれた座談会は、日本は西洋物の輸入に未消化のまま追われてる、海外ではいまだ根強い階級が存在しないとかの今でも使われるクリシェが愛国勤皇の標語と混じって、簡単に厄介払いできないアマルガム。2016/08/12
記憶喪失した男
7
この本は1942年に書かれたものに1979年に竹内好が解説を書いて出版したものである。ヨーロッパの世界支配に対して、それを超克するために大東亜戦争があり、それによって新世界秩序を築こうという思想は1942年からあったようである。島崎藤村はフランスへ行った時驚いたのがまだ階級制度が残っていたことである。中国でも残っていた。日本から階級制度を取り除いたのは、自由民権運動ではなく、明治維新である。「近代の超克」という単語によって、戦中の思想的高揚が図られたらしく、どうも悪役にされた座談会のようだ。2017/02/08
yumiha
6
ポストモダンとは何か?を考える前に近代を知らなくちゃという問題意識で読んでみたが、じぇんじぇん違った。明治生まれの学者文化人たちが真珠湾直後の昭和17年に寄り集まっての対談。このおじさんたちの「近代」は、輸入された西洋文化に抗するための思想の共通基盤を見出そうとしたわけだが、それぞれの依って立つところが違うので、かみ合わない。私は、アジアの盟主たらんとする思想的根拠を、まるで攘夷(?)から導こうとしているような発言に鼻白んでしまった。すでに西洋文化が浸透し終わった時代に生まれ育ったものには、何ともはや…。2014/11/01
thinkeroid
4
"「近代の超克」は、いわば日本近代史のアポリア(難関)の凝縮であった。復古と維新、尊皇と攘夷、鎖国と開国、国粋と文明開化、東洋と西洋という伝統の基本軸..."2010/01/01