感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みや
31
生後17年間ずっと幽閉され、1828年に保護された少年の記録。現実とは思えないほど衝撃的な生い立ちに愕然とした。音一つ無い部屋で座ったまま、見えざる飼い主に水とパンのみを与えられてきた少年は、精神・知能・身体全てが未発達。言葉を覚えていくことで自らの生育史を語りだし、美しい星空を見て初めて己が不幸であることを認識して涙を流す姿に、幸福とは、生活とは、存在とは何かを突き付けられた。「幸せになって欲しい」という言葉は、何と身勝手なのだろう。勿論、何一つ明かされることのなかった出生と暗殺の謎にも興味が尽きない。2018/07/20
ruki5894
11
実際の出来事だったのか。映画にもなってるらしいが、知らなかった。謎は謎のままで亡くなったんだね。ナナメ読み。2022/10/08
たけはる
9
小説を書く資料用。カスパー・ハウザーの話は以前ウィキペディアで見かけたことがあるのですが、本だとそれ以上にいろいろ書かれていて新鮮でした。彼は何者だったのか疑問が尽きない。2021/09/14
misui
4
生後17年間の幽閉生活ののち発見されたカスパー・ハウザーの記録。著者はカスパーの身近で観察の機会を得ることができた人物(ただし法学者)で、彼の堰を切ったような発達過程をつぶさに伝えている。いささか性急とはいえ手厚く遇されていたように思うが、自叙伝に着手するという話が出た途端に暗殺されてしまうのはたしかに意味深で、大公の後継者説なども出て現在も謎のままらしい。人の一生が実験動物のレポートになってしまったようで心をざわつかせる。2016/06/01
かすみ
3
2.3年前に映画『カスパー・ハウザーの謎』を見て衝撃を受けて、たまたま見つけたので読んでみた。大体映画と筋は同じだけど、本は学者目線。映画はカスパー目線、という感じ。王位継承のお家騒動で人質となって(説が濃厚)、16歳まで地下牢の中で暮らしたカスパー。社会に出てきて、当然のように教育を受けていくけど、一体それはどこのスタンダードを目指しているのか。人は生まれつき愛情を受けて然るべき教育を受けるものだという考え自体が社会的に作られたものであるということを思い出す。では、どうすればカスパーは幸せになれたの?2021/02/28