目次
1章 教会で叫びたかった少女―自閉症児の認知世界
2章 空白の時間―一過性の全健忘
3章 二度目の初対面―相貌失認をかかえた生活
4章 ものを見分ける才能―顔の認知処理の過程
5章 二本足のリンゴ―脳損傷によるイメージ障害
6章 キリンの足は長い―脳損傷による視覚記憶の障害
7章 光のない世界―全盲の子どもの豊かな想像力
8章 クリスマス・ツリーズ―言語障害を運ぶ遺伝子
9章 言葉のメロディ―脳卒中発作による単語の聴理解の障害
10章 ふたつの脳―脳梁切断による右脳と左脳の分離
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
袖崎いたる
8
風景の物語ではなく、認知障害者の心の風景の解説。いろいろな障害が並ぶ。どの障害者の心の風景も、定型発達的な健常者の自明な挙手投足が自然であるとも不自然であるとも理解できるような、危うい自明さであるのかを告げている。その意味で現象学的主体も危ういし、科学的主体も危ういように思える。本書は精神分析書ほどに概念装置で吊っていくことはしない。かといって医学的事実を告げる論文というほど科学的な清潔さもない。心理学の学識を持った教育者による症例報告という感じかしら。個人的には言葉へのフェチという観点ではかなり好感触。2017/03/27