出版社内容情報
大阪の心斎橋からほど近い空堀商店街で「ソノガラス工房」を営む道と羽衣子。兄の道はコミュニケーションが苦手で、「みんな」に協調することができない。妹の羽衣子は、何事もそつなくこなせるが、突出した「何か」がなく、自分の個性を見つけられずにいた。正反対の二人は、祖父の遺言で共に工房を継いでからも衝突が絶えなかったが、ある日「ガラスの骨壺が欲しい」という依頼が舞い込み――。兄妹が過ごした十年間を描く傑作長編。
内容説明
大阪の空堀商店街で『ソノガラス工房』を営む道と羽衣子。兄の道はコミュニケーションが苦手で、「みんな」と協調することができない。妹の羽衣子は、何事もそつなくこなせるが、突出した「何か」がなく、自分の個性を見つけられずにいた。正反対のふたりは、祖父の遺言で共に工房を継いでからも衝突が絶えなかったが、ある日「ガラスの骨壺が欲しい」という依頼が舞い込み―。兄妹が過ごした十年間を描く傑作。
著者等紹介
寺地はるな[テラチハルナ]
1977年、佐賀県生まれ。2014年、『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。令和2年度咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。2021年、『水を縫う』で第9回河合隼雄物語賞を受賞。2024年、『ほたるいしマジカルランド』で第12回大阪ほんま本大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タルシル📖ヨムノスキー
36
とても素敵なタイトル。こだわりが強く周りに合わせることができない兄の道と、何でもそつなくこなすがズバ抜けた才能のない妹・羽衣子。二人が大好きだった祖父のガラス工房を継ぐ物語。メディアでの障害者の取り上げ方に、コレまで漠然とした違和感を感じていましたが、二人のガラス工芸の師匠・繁實さんの言葉がその違和感の正体を明らかにしてくれました。障害当事者の障害との付き合い方、親であるが故の葛藤、兄弟(妹)だからこその嫉妬。努力とは、才能とは、自分とは、家族とは、共生とは…。温かくて切ない、充実した読書時間でした。2025/05/16
よっち
28
祖父の遺言で共に工房を引き継いでからも、互いに苦手意識を抱き衝突が絶えない兄の道と妹の羽衣子。とある依頼をきっかけに少しずつ変わってゆく物語。幼い頃から落ち着きがなくコミュニケーションが苦手な兄の道と、そつがないけれど突出した何かがなく兄の才能に複雑な思いを抱く妹の羽衣子。正反対の性格で、最初はお互いのことを理解しようともせず反発しかなかった二人が、自分を認めてくれる人と出会い、仕事に真摯に向き合う中で何だかんだでお互いを認め合うようになってゆく、ひとつひとつの出来事の積み重ねがとても印象的な物語でした。2025/05/09
mayu
26
祖父から継いでガラス工房をやっていく事にした兄の道と妹の羽衣子。道は曖昧な言葉や察するという様な事が苦手だ。羽衣子はなんでも卒なくこなすけれど、抜き出た才能に憧れている。何者かになりたいけど突き抜ける何かが見つからない焦りに共感したし、あまりにも違う人の事ってわからなすぎてそのわからなさがイラだちに繋がってしまうのだろうなと感じる。道からしたら人なんて皆違うものだ。道や繁實の言葉には何度もハッとさせられた。時にぶつかり合いながらも互いを大切にしている姿がとても良かった。読後に余韻が残る一冊。2025/07/23
いっちゃん
21
解説を砂村かいりさんが書いてます。単行本で読んだときより、やはり筋がわかっているからか、理解が深まるように感じます。見た目にわからない、軽度の障碍はなかなか理解されづらい。手のかかる子どもを優先せざるを得ないのは、親としては致し方ないところなんだけど、置いてきぼりをくらう当事者はさみしいよね。それでも近くに温かい祖父母がいてくれたことはありがたい。2025/07/10
イシカミハサミ
18
祖父の経営していたガラス工房を成り行きで継いだ、兄妹の物語。 物語は、妹・羽衣子のモノローグから始まる。 どうやら兄は“普通”のことを“普通”にこなすのが難しいらしい。 しっかりした妹。 少し足りない兄。 すこし読み進めていくと、どうやら少し事情が違う。 20歳という年齢からしても妹の精神年齢は幼いように見えてくる。 ――。 人と、生きるということ。 人と、この場所で、生きていくということ。 そういう当たり前を、そっと両手で包み込むような、そんな作品でした。2025/05/31