出版社内容情報
「長州ファイブ」の一人として伊藤博文らと海を渡り、日本に鉄道を敷くべく、ひたむきに生きた男・井上勝を感動的に描く長編小説。
内容説明
我が職掌はただクロカネの道作りに候―。幕末、長州に生まれた弥吉(井上勝)は、国禁を犯して伊藤博文、井上馨らと長州ファイブの一人として渡英した。ロンドンで西欧の近代化を目の当たりにし、鉄道こそが国を発展させると確信する。帰国後、伊藤らが中央政界で活躍するなか、勝は立身出世には背を向け、ひたすら鉄道敷設に邁進するが…。技術大国の礎を築いた“魂の技術者”の物語。
著者等紹介
江上剛[エガミゴウ]
1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。77年、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。人事、広報等を経て、築地支店長時代の2002年に『非情銀行』で作家デビュー。03年に同行を退職し、執筆生活に入る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まつうら
6
松下村塾出身なので、井上勝よりも野村弥吉のほうが自分にとってはピンとくるが、弥吉が鉄道王になるのは知らなかった。 鉄道をつくるには、あらゆる土木工事に通じていなくてはならない。それらを英国で学び、実践し、後世に残していった偉業は計り知れないと思う。素人目にも、シールドマシンなどなかった手掘りの時代に、列車を通せるほどの大きくて 頑丈なトンネルを掘るのが大変だったのは察しがつく。 JR社内でも井上勝を知らない人が多くなったとあとがきにあったが、忘れずに語り継いでいってもらいたい。
hiyu
5
教科書では本の数行、驚くほど簡単な記載であったような記憶がある、日本で初の鉄道開通。それに尽力した井上勝の功績はあまりにも知られていないように思われる。ラストの情景はなんだか停滞しているあれにも通じるように感じられた。2022/11/15
Elingyan
5
危機感は人を成長させるんだな、と思います。当時の英国の発展具合を見て、危機感を持ったからこそ、勝を始め、明治維新後には精鋭が多く生まれたのだと思います。 今でこそロンドンにいると日本は素晴らしい国だなと思いますが、先人が築いた成功に胡座をかくのではなく、更に日本をより良い国にできるように努めることが必要だと、改めて感じました。 そして、川勝のせいで停滞してますが、リニアという新たな時代の乗り物に乗れる日が訪れることを、楽しみにしております。2021/06/30
May
4
日本の鉄道建設黎明期を、長州ファイブの一人である井上勝の人生を通して物語として描く。井上の人生が即ち本邦鉄道建設の歴史なんですね。鉄道建設黎明期の歴史の流れを軽く知っておきたいと考える人にお勧めしたい。小説として読むのは止めておこう。2023/08/09
rinrinkimkim
3
酒井11国鉄の始祖物語。西への旅に持参。丹奈トンネルでは吉村作品に想いを馳せましたが、そのポイント以外では本書に寄り添うようなレールの音を聞きグッと気分が盛り上がりました。密航留学帰国工事と勝の人生が進むのと同時にレールも伸びる。彦根の駅で東海道線のライトがきらりと光った時、勝たちのおかげでレールは伸び続けている。と旅(特に鉄旅)には相性バッチリの内容です。50代働き盛りも若い血潮をそのままにレールを後輩をと走り続ける勝の姿は力強い蒸気機関車のようでありました。2022/03/23