出版社内容情報
「通学のバスの中で見かけるあの人みたいになりたい……」
奈鶴(なつる)はバスで席を譲る律(りつ)の姿を見て名前も知らな律のことが気になりはじめる。
一方、律は自分が落ちた中学の制服を着た奈鶴のことを少し目障りに感じている。奈鶴と律はバスの中で見たお互いの姿をきっかけに大切なことに気がつきはじめる。
男女ふたりの視点で描かれる、一歩前に踏み出す勇気をくれる青春成長ストーリー。
バスを降りたふたりは、新たな一歩を踏み出す。
【目次】
1 side:奈鶴 七時三十六分発、駅西口行き/2 side:律 居場所はここじゃない/3 side:奈鶴 絵の中の鳥/4 side:律 こだわっていたのは/5 side:奈鶴 初めての眼鏡/6 side:律 中庭のふたり/7 side:奈鶴 あのひとみたいに/8 side:律 たとえばそういうことだって
内容説明
同じ中学の受験に、“合格した”奈鶴と、“落ちた”律。バスの中で交差するふたりの視点で描かれる青春成長ストーリー。バスを降りたふたりは、新たな一歩を踏み出す。
著者等紹介
眞島めいり[マシマメイリ]
作家。2019年、第21回ちゅうでん児童文学賞大賞を受賞し、『みつきの雪』(講談社)でデビュー。同作で第50回児童文芸新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
74
児童書。YA。毎朝バスで乗り合わせる2人の中学1年生の話▽[side:奈鶴(なつる)]バスで見かける清瑛(せいえい)中学の男子生徒が気になる、空木奈鶴(うつぎなつる)は峰森高校附属中に通っている。英語の家庭教師の奏(かな)先生に「なんで英語を学ばなければいけないのか分からない」と相談する[side:律(りつ)]中学受験に失敗して、不本意に清瑛中に入学した律はバスで見かける峰森附属中の制服に苦手意識がある。学校説明会の資料作りを任された律はマイペースな志鳥(しどり)と組まされ悩む▽中1の苦悩。始まりの物語2023/05/27
がらくたどん
72
小学校を卒業すると学校での彼らは「児童」から「生徒」になる。もう「わらべ」じゃない。でも全然「おとな」とかじゃない。中学生から高校生の心が揺れながら育つ時期を繊細に丁寧に描いてくれる作者さんがまたひとり。『みつきの雪』『夏のカルテット』の作者さん3作目は、通学バスの中だけで目にする気になる「あの人」。行きたかった中学、なりたい自分。出会ってすらいないのに生まれる不思議な思いは半分以上思い込みの想像だけど、だからこそ全部自分を育てる栄養にもなる。憧れて諦めかけてもう一度挑戦して。「バスを降りたら」その先へ♪2023/07/30
seacalf
59
大人になった今でも自分の凝り固まった狭い視野がパァッと開く瞬間がある。中学校に上がったばかりの年代なら、きっとなおのこと。気付きや発見、学びの毎日だったなあと自分を振り返り少しくすぐったくなる。志望校に入れず頑なな心を持ち続けている少年律と、同じ通勤バスで出会った彼のさりげない行動に憧れる奈鶴。それぞれに鬱屈を抱えつつも、同級生の志鳥くんや家庭教師の奏先生の影響を受けながら2人の『わだかまりがしゅるっとほどけていく』様子を見守ることが出来る。割と地味目で静かな展開だが成長していく2人に清々しさを感じる。2023/10/29
真理そら
56
同じバスで通学する二人の中学生はただ同じバスに乗っているというだけの関係だが互いに相手を意識している。女の子は「(すっと自然に席を譲れる)あのひとのようになりたい」という気持ち、男の子は「自分が落ちた中学校の制服を着た中学生を見るのは辛い」という気持ち。中学一年生の大人になりかかった自分を持て余すような雰囲気が伝わる作品。2024/06/23
モモ
53
附属中1年の奈鶴と、附属中を不合格になり別の学校に通うことになった律が主人公。奈鶴は具合が悪そうな人に席を譲った律にあこがれる。また律は自分が落ちた附属中に通う奈鶴に複雑な心境を持つ。律は、なかなか自分の学校を好きになれなかったが、同級生と学校のパンフレットを作るうちに、考えが変わっていく。受験で自分の希望の学校に行けなかった子が読むと、視野が広がるきっかけになりそうな本。爽やかな展開と読後感でした。2023/06/29