出版社内容情報
「白峯」「菊花の約」などで知られる上田秋成の古典「雨月物語」を下敷きにし、近未来を舞台に人間の業と怪異と家電(?)を描いた不思議で恐ろしい九つの短編集。
・大企業「シラミネ」の経営者はデジタル遺影を片手に亡き祖母の思い出を語りはじめ……(「シラミネ」)
・オンライン空間「Kikka」の中で出会ったアカナと共に、ゲームの世界大会を目指す祐介だったが……(「キッカの契り」)
・見合いの席で、正太郎はから古めかしい炊飯器を見せられる。その炊飯器には曰くがあるようで……(「キビツの釜」)
内容説明
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』の著者が描く雨月物語×近未来の新感覚ホラー!
著者等紹介
青柳碧人[アオヤギアイト]
1980年千葉県生まれ。早稲田大学教育学部卒。2009年『浜村渚の計算ノート』で第3回「講談社Birth」小説部門を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
193
青柳 碧人は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、著者版令和雨月物語、今回はシリアスな連作短編集でした。オススメは、「シラミネ」&「ブッポーソウ」&「アサヂが宿」です。 https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-85882-1 3月は、本書で読了です。2025/03/31
ちょろこ
126
雨月物語を近未来に引っ越しさせたような一冊。さすが青柳さん。雨月物語に疎くても近未来の家電を絡ませた9篇はどれもさまざまなテイストで楽しませてくれた。一話目の「シラミネ」から、デジタル遺影といういかにもあり得そうな近未来を差し出されながら江戸時代から引っ越してきた雨月物語を読んでいるような感覚。そこから次々と人の夢の結晶のような家電の登場とちょっとゾッとくる人怖ホラーがぞろぞろ。人の業は永遠不滅。これだけは家電でもどうにもこうにもできない皮肉さもいい。せつない読後感がたまらない「キッカの契り」が一番好き。2025/04/24
mint☆
89
雨月物語。ちゃんと読んだことがなくざっくりとした概要しかわからない。「吉備津の釜」だけ読んでみてからこちらを読みはじめました。読まなくてもほとんど別物なので楽しめますが、読んでいるとその変わり様も楽しめそう。時代はちょっと近未来。今この時代にはない電化製品(?)とちょい怖と不思議さがミックスされた9つの短編集。主はヒトコワ系だけどちょっと感動もあったり話に繋がりがあったりで色々と楽しめます。暑い日でも快適に外出できる冷却スーツのアオズキン、欲しいな。オシャレではなさそうだけど。#NetGalleyJP 2025/03/17
星群
66
もとの話をよく知らないのに、この手の話は無性に読みたくなっちゃいます。良い塩梅なシュールさで私好みのでした。特に一話目の『シラミネ』。電化製品と雨月物語を融合させるなんて、発想が面白いですな。その電化製品も近未来的でした。まぁ、もと話を知らない身としては、あらすじが付いてるとよかったかなって思います。2025/05/30
ひさか
65
WEB文蔵2023年8月〜2024年6月掲載のものに加筆修正し、2025年3月PHP研究所刊。シラミネ、夢応のリギョ、ブッポーソウ、アオズキン、蛇性のイン、キッカの契り、ヒンプク論、キビツの釜、アサヂが宿、の9つの短編。雨月物語の全9編をなぞってあるのが努力賞もの。オール電化には少し無理もある。ドタバタ感も多いが、怖さも見えて、怪作というところか。2025/04/27