出版社内容情報
「長州ファイブ」の一人として伊藤博文らと海を渡り、日本に鉄道を敷くべく、ひたむきに生きた男・井上勝を感動的に描く長編小説。
江上剛[エガミゴウ]
作家
内容説明
鉄道を日本へ。幕末、長州ファイブの一人として国禁を犯して英国へ―。伊藤博文らが政治の世界を突き進むなか、ひたすら鉄道敷設に人生を捧げた男を描いた著者渾身の長編小説。
著者等紹介
江上剛[エガミゴウ]
1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。77年、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。人事、広報等を経て、築地支店長時代の2002年に『非情銀行』で作家デビュー。03年に同行を退職し、執筆生活に入る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
224
日本の鉄道が、なぜ狭軌になったのか? 前々から不思議だったが、著者の細かい取材の結果か、妙にリアリティをもって納得できた。維新の三傑など、幕末・維新のこれまでの「偉人」の陰で、知られざる人たちが実は時代を作ってきた、との思いが沸き上がる名著。さすが、江上剛。みずほ銀行・築地支店長から作家に転身しただけあって”経済小説”の面白さと、これまであまり知られていなかった井上勝の凄さが自然に伝わってきた。2020/11/29
あすなろ
76
長州の松陰に影響された攘夷思想の若者は、進んで人間の器械となり、明治維新後20年、我が国の鉄道敷設に邁進した井上勝の物語。ゲージを狭軌に決したり、攘夷思想よりも開国文明キャッチアップ等、それら知識も興味深いものであったし、東海道・中山道ルート選択も興味深かった。但し2点。もう少し描き込んでいっても良いのではないか?そして、最後のエピソードは全く必要ナシ。その辺りが何故か惜しいのである。2017/07/31
もえたく
16
山本巧次『開化鐵道探偵』に依頼者として登場した「鉄道の父」と呼ばれる井上勝の偉人伝。長州五傑の1人として井上馨や伊藤博文と共に密航してロンドンに渡った青年時代から、ひたすら日本全国に鉄道を開通させようと奔走した雷親父と言われる時代までが描かれ、益々興味深い人物だと思いました。さらっと触れられているゲージの狭軌採用や中山道ルートから東海道ルートへの変更について、もう少し知りたくなりました。2018/02/23
Yasushi Hanada
9
幕末期に鎖国の禁を破って密航した長州ファイブのうちの1人である井上勝が邁進した鉄道事業の話。知らない事ばかりで興味津々で読めた。2017/05/08
trazom
8
鉄道の父と呼ばれる井上勝の生涯を描いた小説。イギリス留学時代を前半とし、日本初の鉄道を敷設させた業績を後半として、淡々とその実績が描かれる。若き技師長として献身したモレルへの感謝、大阪駅の位置決定の経緯、中山道ルートから東海道ルートへの変更など、日本の鉄道黎明期の苦労話を知ることができる。長州ファイブとして一緒に若き血を滾らせたが、伊藤博文や井上馨のように権力の階段を上った人物に対し、井上勝は、鉄道というロマンに賭け、現場に立ち続けてプロジェクトを推進した熱血漢であった。その清々しい人生に拍手を送りたい。2017/04/18