出版社内容情報
太平記を「禅」の視点から読み解く! 激動の南北朝時代の始まりから終焉までを、禅僧・夢窓疎石の生涯を軸に描いた渾身の大河小説。
服部真澄[ハットリマスミ]
作家
内容説明
夢窓とは、虚無から円覚に開かれている目覚めの窓。その名を持つ禅僧・夢窓疎石は、武士の子でありながら九歳で出家し、南北朝の動乱の時代を生きた。両陣営のリーダーである足利尊氏や後醍醐天皇、さらには七代の天皇から師と仰がれた男の生涯を通して、謎多き時代を俯瞰する長編歴小説。
著者等紹介
服部真澄[ハットリマスミ]
1961年東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業。処女作は1995年『龍の契り』(祥伝社)。『鷲の驕り』(祥伝社)で吉川英治文学新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さつき
61
夢窓疎石を軸にすることで、鎌倉時代から南北朝、室町時代と次々に変わる権力者達の変遷を俯瞰して見られたように思います。驚くのは、政争と禅宗がかなり密接に関わっていたこと。当時、新しい教えだった禅に、天皇、上皇、将軍、執権などがいかに心を寄せていたか。戦乱の世だからこそ、心の平安を求めていたのでしょうね。足利尊氏と直義兄弟の物語は、この小説でもやはり切なかったです。2018/05/24
Book & Travel
42
天龍寺などの作庭でも有名な高僧・夢窓疎石。南北朝時代、対立する後醍醐天皇と足利家の双方から師と仰がれた人物に以前から興味があった。この小説では四編の主人公、高峯顕日、後醍醐天皇、足利尊氏・直義兄弟、足利義満の、それぞれが胸の内に抱える苦しみと夢窓との関わりが話の軸になっている。宮中の後継争いが中心の前半200頁ぐらいまでは読み辛く苦しい読書だったが、尊氏が出てくる辺りからじわじわと面白くなり後半は一気読み。乱世の中で救いを求める人々に対する夢窓の教えは興味深く、円覚経や無私な姿勢に心打たれるものがあった。2017/06/14
aloha0307
23
後嵯峨天皇? 表題と内容が合わないのでは? 150頁過ぎまでの懸念も、本書の時間軸が南北朝の始まりから、収束までと解ってからは納得。夢窓疎石師が足利尊氏に禅の摂理を説く場面が白眉極まる。心の四苦 特に五蘊盛苦 ここには言葉を失った。愛が嫉み、憎しみを生むのか...その後の高師直、弟:直義との訣別 作者あとがき、”世の中で敵味方の対立軸がばかりが目立ち始めるにつれ、人は争いへと駆り立てられてゆく” いつの時代も人間の営みはまったく変わらないのだな(強い絶望)。2017/05/28
ヲカダ
8
南北朝時代の臨済宗の高僧である夢窓疎石を題材にしている。禅宗はあまり生臭い印象を持っていなかったけれど、悩む足利尊氏に布施を勧めるところに、なんだかなあと思ってしまった。そして、宗教に頼らざるをえない弱さを持つ尊氏と、死後に東照大権現として自らを神格化した徳川家康との器の差を感じた。そして、それがそのまま室町時代と江戸時代の安定の差になったんじゃないかなーとか考えてしまいました。煩悩から離れることを説きながら、美しい庭園にこだわるあたりに矛盾を感じたりもしました。やっぱ宗教って、ちょっと胡散臭いw2017/10/20
Eiko
4
私の大好きな作家さん、服部真澄さんの最新作。「太平記」を「禅」という切り口から見た作品です。勢いよく読み始めたものの、そもそもの私の知識が乏しい上、登場人物が膨大でかつそれぞれの縁戚関係が込み入っていること、同じ人物でも年齢とともに名前が変わったりすること、同じ字を使い回す一族が多いこともあって、途中からもう誰が誰やらという感じ(脳内メモリーが確実に不足)。これだけの物を書くには一体どれだけの資料を読みこんだのかと想像すると、ひれ伏すほどの苦労があったのではないかと・・・。2017/07/05