出版社内容情報
「文学作品」のモチーフが数多登場する人気VOCALOID楽曲、『文学少女インセイン』から着想を得たノベライズ作品。
【著者紹介】
シナリオライター
内容説明
「文学の使者」を自称する不思議な少年・アイに導かれ、巨大な「塔」の入り口に連れて来られた津島文歌(つしまふみか)は、元の世界に戻る手がかりを探るべく、塔の内部に足を踏み入れる。扉の向こうには、どういうわけか、大正・明治の雰囲気漂う“帝都”と呼ばれる世界が広がっていた―。
著者等紹介
カラスヤサボウ[カラスヤサボウ]
VOCALOID楽曲を手掛けるプロデューサー。2010年6月6日ボカロPデビュー。疾走感のあるギターサウンドと独自の世界観を展開した楽曲で人気を博している
保坂歩[ホサカアユム]
シナリオライター。「ゼロサムWARD」にて、漫画『噂屋』の原作を担当している。他、ゲームシナリオやドラマCD脚本など、各分野で活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジコ坊
5
文学を愛し、軽薄な人間関係を嫌う津島文歌。彼女は自分の内面世界である塔の中へ迷い込み、そこで自分が「引用」した過去の文学達の歪められた姿を目にする。言葉を狩られてメニューが減ってゆく『注文の多い料理店』のに、死ぬ理由を忘れさせられた『ウェルテル』、顔に「検閲済」の印をおされた『舞姫』のエリス。文歌は「文学の使者」を名乗る少年に、彼らを歪めたのは彼女自身(の分身)であり、現実世界に戻るには自分の分身たちと戦い、その歪みを正さなくてはならないと告げられる。 2014/03/23
ユウ@八戸
5
ボカロ曲なんだけど、その辺は気にしなくても読めます。なにこれすごいよ。文体は『文学』と言うには軽めで読みやすいけど、内容は『文学』と言ってもいいんでないでしょうか。解釈の仕方もいろいろありそう。2014/03/11
なぎ
3
他のボカロ書籍と比べ、ずっとシックに、シリアスに展開していくような小説だと思います。ボカロというものを感じさせないこの内容は、カラスヤさんならではかもしれません。普通に面白く、何よりも文学についてよく考えさせられます。この本はあまり読書をしない人に読んでもらうのがいいかもしれませんね。塔の中で自分の創りだすものに立ち向かう主人公…。登場人物は主人公とアイを除いて有名人ばかり。本好きにはたまらない登場人物達でした。ボカロというのを気にせず読める、素晴らしい作品だとおもいます。2014/03/01
鑑真@本の虫
2
ボーカロイド楽曲『文学少女インセイン』ノベライズ。 だが、まるでそう感じさせず、一個体の文学をライトノベルにしたという印象。 文学少女の主人公が内なる世界・塔京へと導かれ、近代古典の名作と触れあいながら、自分に向き合う。 物語自体は凡庸だが、類い稀なる文学知識と語彙が詰め込まており、いわゆる純文学や近代文学好きなら喜びを覚えるほど。 ウェルテルや山猫などの登場人物の性質をよく理解した上でオマージュされているのも素晴らしい。 話は面白くないが、文学的側面からは間違いなくボカロノベライズ最高の作品。2014/12/26
黒崎ディートリッヒ
2
文学大好きな女子高生、津島文歌は<文学の使者>を名乗る謎めいた少年「I」に導かれ、文学小説に登場するキャラたちが生きるパラレルワールド<塔京>にやって来るが、そこは恐怖の世界だった!! 楽曲のイメージも上手く表現されてる作品。特に日本文学だけにこだわっていない所が良い。 読んでいてこれまで読んだ文学を思い出したり、新しい文学を知ることが出来る作品。ヒーローの「I」は文学小説に「わたし(I)」という名無しの主人公がいるからこの名前だと思う。 ヒロインにとっては、「読む側から書く側へ」の物語だと思います。 2014/06/21