出版社内容情報
当代一流の歴史家が、研究の途上に興味を持ち、長年追い続けて結論を得た、珠玉の昭和史秘話10編を収録した読み応えある一冊。
【著者紹介】
歴史家、元日本大学法学部教授、法学博士
内容説明
玉砕の島で米兵86人を機関銃でなぎ倒した美人芸妓。司馬遼太郎の「轢き殺してゆけ」伝説の真偽と争点。毛沢東暗殺を企てたとして処刑された日本人の実像。作家・堀辰雄「風立ちぬ」のヒロインとその周辺。著者が長年にわたり調べつづけてきた、歴史のドラマ10話。
目次
第1章 玉砕の島ペリリューの女兵伝説
第2章 「炎のランナー」たちの勝利と失速
第3章 インパール戦・山守大尉、私の突撃
第4章 司馬遼太郎と戦車
第5章 作家・堀辰雄の周辺
第6章 秘密兵器・「チビ」弾の喜劇風生涯
第7章 ベトナム残留日本兵の春秋
第8章 ディエゴスアレスの月
第9章 毛沢東暗殺未遂事件の怪
第10章 スマランのオランダ人慰安婦たち
著者等紹介
秦郁彦[ハタイクヒコ]
昭和7年(1932年)山口県生まれ。現代史家(日本近現代史・軍事史)。昭和31年東京大学法学部卒業。同年大蔵省入省後、ハーバード大学、コロンビア大学留学、防衛研修所教官、大蔵省財政史室長、プリンストン大学客員教授、拓殖大学教授、千葉大学教授、日本大学教授を歴任。法学博士。平成5年度の菊池寛賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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禿童子
35
秦郁彦さんの本は2冊目。戦争史がメインと思っていたが、堀辰雄『風立ちぬ』の舞台裏を探る「作家・堀辰雄の周辺」は、作家をめぐる人間関係を明快に描き出している。司馬遼太郎のいわゆる「司馬史観」の原体験の日本戦車に密着した「司馬遼太郎と戦車」は、司馬がノモンハンを舞台とする小説を構想しながら断念した理由について、半藤一利『清張さんと司馬さん』で提示された説とは別に書けなかった理由を分析・再整理し、歴史小説と歴史の関係を見直すための優れた視点を提供している。戦前戦中のキラリと光る逸話を証言と資料で蘇らせる好著。2020/09/07
讃壽鐵朗
2
よく調べたものだと感心2019/12/21
CTC
1
雑誌発表の10編だが、価値ある一書。マダガスカルを特殊潜航艇で襲い、戦艦を大破させた秋枝中尉らの話などは、知る人は知る話だが、『永遠のゼロ』のような作り事で感動する位ならば、是非読んで欲しいと思う。本書のハイライトは司馬遼太郎「神話」の章だ。「轢き殺して行け」の話は私も大本営参謀のお粗末さを象徴する話、と随分人に話してしまったんだけどなぁ。。それからノモンハンの小説が頓挫した理由のひとつに、主人公にと目した男性に絶交される(確かに瀬島龍三と笑って対談する輩に昭和史語る資格なんてないな)事件があったとは。。2014/06/01
あにき
1
日本軍には女性兵士は存在しなかったはずなのだが、玉砕の島で戦った女兵士がいる…その謎を時間をかけ丹念に調べた話、世に司馬史観と言われるものの誤謬、中・越残留日本人の戦後、日本海軍によるマダガスカルの戦い、「炎のランナー」と日本の関わりなど興味深いテーマを時間をかけ丹念に調べあげている。堀辰雄の話がネックとなり積ん読になっていたのだが、ジブリの映画を好機として読了。オランダ人慰安婦の話もあり一読する必要がある。2013/08/14
鈴木貴博
0
昭和史の十の秘話を追う。ペリリューの女戦士伝説、インパール戦・山守大尉の突撃、司馬遼太郎の軍隊経験と「轢き殺してゆけ」伝説を巡る話、ベトナム残留日本兵の逸話、マダガスカルのディエゴスアレスでの特殊潜航艇攻撃、「毛沢東暗殺未遂事件」で処刑された日本人と事件の真相等々。大きな歴史の流れの中で、先人たち辿った様々な運命に粛然と襟を正す。2017/12/02