出版社内容情報
少年と千紗子と認知症の父。嘘から始まった生活は新しい家族のかたちを育んでいくが、やがて破局の足音が……。感動&衝撃の家族小説。
【著者紹介】
作家
内容説明
あの夏、私たちは「家族」だった―。息子を事故で亡くした絵本作家の千紗子。長年、絶縁状態にあった父・孝蔵が認知症を発症したため、田舎に戻って介護をすることに。そんな中、事故によって記憶を失った少年との出会いが、すべてを変えていく。「嘘」から始まった暮らしではあるものの、少年と千紗子、孝蔵の三人は歪ながらも幸せな時を過ごす。しかし、破局の足音が近づいてきて…。ミステリ作家が描く、感動の家族小説。
著者等紹介
北國浩二[キタクニコウジ]
1964年、大阪市生まれ。2003年、『ルドルフ・カイヨワの事情』で第5回日本SF新人賞に佳作入選、05年、同作を改題した『ルドルフ・カイヨワの憂鬱』でデビューした(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
142
「ひとは自分に噓をつくために他人に噓をつく。」チャールズ・V・フォードの言葉だそう。「良い結果をもたらす噓は、不幸をもたらす真実よりいい」という諺もある。これまでどれほどの『噓』をついてきたかしれない。誰かのために・・良かれと思って・・その罰は私があの世にもっていきますからーさて、本作は2011年の作品だそう(作品も作家さんもお初だ)虐待を受けていた子を我が子として育てるーなんてことだけではなくて、初めの噓が他方に広がりそしてこんな惨事に。だが不幸にも幸せな結末を迎える時、私の心も浄化された気がする。2024/04/02
ぽこぺん
38
とてもよかった。結局のところ産みの親より育ての親だよね。なにより拓未くんが幸せになれたことが一番だと思う。2025/02/10
kayo
34
息子を亡くし空虚に生きる千紗子、認知症を発症した父の孝蔵、虐待の形跡のある少年の拓未、不意に始まった三人暮らし。孝蔵の認知症の進行が早過ぎ、また起こす行動が典型的過ぎて取ってつけたみたいだったけど、衰えてゆく日々を書いた日記は迫るものがあり、医師の亀田が認知症の症状を説明する場面はなるほどと思えた。辛い現実に生きるより、平和な嘘の中で支え合って生きられたら良い。でもその平和を守るための代償は大きかった。終章は、絶望を払い人生に光や救いを見つけるための嘘なら赦してもいいか?と問われたようだった。2024/07/12
morinokazedayori
31
★★★★千紗子は、認知症になった父の世話をするため郷里に帰る。そこで少年と出会ったことから、千紗子の生活は大きく代わり始める。子どもの死、離婚、虐待、いじめ、犯罪など、それぞれが様々な苦悩を抱えながらも、大切な人と笑顔で過ごすことで、苦しみを乗り越え成長していく。生きていくってなんて大変なのだろう。医師として、父の友人として、常に周りを支え続ける亀田の存在感が光る。亀田のような人にいてほしいし、亀田のようになりたいと思う。2022/09/18
hrmt
31
初読みの作家だったが思わぬ佳編に出逢えたようで嬉しい。幼い息子を亡くした千紗子.虐待を受けていた拓未.認知症が進行していく孝蔵。それぞれが噓を塗り重ね、偽りの家族を築いていく。それは不安定であるはずなのにとても幸せそうで、苦しみから目を背ける事は生きる力として脆弱なものであるにしても、人という弱い存在に時に必要な行為であるように思える。生まれて死ぬまでの人の道程で、誰もが幸せを求める権利があるだろう。誰もが幸せになれる噓ならば、それはそれでいいのではないかと思えた。幼い拓未の渇望に最後の一文で涙が流れた。2018/07/04
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