出版社内容情報
「水に流す」とは、日常会話でよく出る言葉。その背景にある日本独自の精神文化を、歴史を追って説き明かしていくユニークな文化論!
【著者紹介】
國學院大學名誉教授
内容説明
「水に流す」とは、今まであったことを、さらりと忘れ去ってしまうことである―そう書き出した著者は、この日本人独特の心情・行動様式を、豊かな水資源を有し、稲作による共同体を形成した点に着目する。「清浄」を尊び、罪や穢れは「禊」で洗い流す。しかし国際化の波は、「水に流す」思想の問い直しを迫っている。『梅干しと日本刀』などの名著で知られる著者による、ユニークな日本人論。
目次
第1章 「水に流す」思想はどうできあがったか(水が果たした清浄機能;日本人の中にある禊思考)
第2章 「水に流す」は民衆の知恵(水が結ぶ共同体;水に見る人の心)
第3章 「水」を敬い、利用した日本人(水にまつわる信仰;水利用に通じていた日本人)
第4章 多湿が生んだ日本文化(水気の演出に美を感じる;多湿との闘いが生んだアイデア)
第5章 「水に流す」共同体の発展はあるか(江戸の商家に見る擬制家族の知恵;現代に息づく共同体精神)
著者等紹介
樋口清之[ヒグチキヨユキ]
1908年、奈良県生まれ。国學院大學史学研究科を卒業。同大學名誉教授。静岡県の登呂遺跡を始め、参加・指導した発掘は400カ所に及んでいる。1997年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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5 よういち
97
「水に流す」とは、過去に拘らず、あげつらわず、責めず、忘れ、許容し、許すという日本人の行動様式で、およそ外国人には理解ができないそうだ。これは穏やかで優しい人間関係を維持するための知恵でもあった。◆日本の川は急流を活かした浄化作用のあるゴミ捨て場だった。河川の氾濫などで災害が起きやすい日本では、災害に慣れ、立ち直る身変わりの早さが「水に流す」という土壌を育んだ。◆「すみません」は水の流れに従順でなかった自分が悪いという考えから◆村のリーダーは集落のいざこざを丸く収める、つまり「水に流させる」役目を担う。2019/07/16
レーモン
3
世界の人は水に流さないのか?日本人って水に流したがるのか?そうなのかなぁ?と思いながら読みました。なんとなく納得させられますが、そうでない典型例として忠臣蔵がありますよね。つまり、そういわれればそうかもって程度じゃないかなぁと思いました。でも発想は面白いなぁと思います。2015/08/16