出版社内容情報
岡っ引き・茂七親分が、季節を彩る「初もの」が絡んだ難事件に挑む江戸人情捕物話。文庫未収録の3篇にイラスト多数を添えた完全版。
【著者紹介】
作家
内容説明
文庫本未収録の三篇を加え、茂七親分の物語が再び動き始めた!茂七とは、手下の糸吉、権三とともに江戸の下町で起こる難事件に立ち向かう岡っ引き。謎の稲荷寿司屋、超能力をもつ拝み屋の少年など、気になる登場人物も目白押し。鰹、白魚、柿など季節を彩る「初もの」を巧みに織り込んだ物語は、ときに妖しく、哀しく、優しく艶やかに人々の心に忍び寄る。ミヤベ・ワールド全開の人情捕物ばなし。
著者等紹介
宮部みゆき[ミヤベミユキ]
1960年(昭和35年)、東京都生まれ。87年、「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。92年、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞、93年、『火車』で山本周五郎賞、97年、『蒲生邸雌件』で日本SF大賞、99年、『理由』で直木賞、2007年、『名もなき毒』で吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
341
宮部みゆきさんの時代物9編。「ぼんくら」シリーズにも登場する、江戸下町の岡っ引き茂七親分が不可解な事件を解決してゆく。おかみさんや、手下の糸吉や権三も良い味を出しています。本作の鍵は季節の「初もの」。白魚や鰹、柿や桜等が江戸の風情とあわせて彩りを与えます。また、三木謙次さんの書き下ろしイラストも読んでいて心を和ませます。人情の機微や、哀しみ、小さな歓び、儚さや底知れぬ悪意等の様々な人の感情が丹念に描かれています。安定して満足のゆく読書時間が送れます。稲荷寿司屋の謎も残る。次作をぜひ書いて欲しい傑作です。2017/01/01
文庫フリーク@灯れ松明の火
255
「今夜はどこへ行っても、鬼さんたちは針の筵だ。鬼は外、鬼は外ぉってんで、豆つぶてを喰らって逃げ出さなきゃならねえ。それじゃあんまり気の毒だってんで、この親父さんは、鬼さんたちに酒をふるまうことにしたんですってさ」節分の夜、江戸は深川冨岡橋たもとの屋台。ぽつり、と据えられた腰掛けの上に敷かれた緋毛氈。その上の、大ぶりの真っ白な盃に注がれた酒。酸いも甘いも噛み分けた、曰く有りげな親父の供する稲荷寿司と工夫凝らした料理。懐かしや、回向院の茂七親分と謎の屋台の親父。単行本未収録だった「糸吉の恋」で、背を向けた→2014/05/23
もんらっしぇ
187
片方の足。それも爪先ですが沼にハマってさぁ大変。宮部ワールドの底なし沼ですwストーリーテリングの妙。様々なお江戸下町の難事件・珍事件を扱いながら、どのお話も「初もの」に引っ掛けてあります。食の楽しみが読む楽しみに気持ちの良い奥行きを与えていて口福至極。古くは池波正太郎の得意技。高田郁さんの澪ちゃんのおかげで一気に花開き今では多くの作家が手掛けてはいるものの、宮部さん、小粋で洒脱な江戸の食文化の表現。並の力量ではないですね。当代随一の人気作家、この作品はマイナーな方でしょうけど見事にハマってしまいました。2020/06/14
Tanaka9999
184
2013年第1版PHP研究所のPHP文芸文庫。9編。解説は末國善己。解説を読むまで「初物」を題材にしているものであることを忘れていた。商家の中の話が多く、比較ほのぼのとした話。もちろん殺人も起こるし悲惨な事件はあるのだが。やはり主人公が基本的に衣食足りて不足がないと感じている点が大きいのだろうか。同じ作者でも現代物の方が何か不足を感じている主人公がいて、それが物語の底流にあるような気がする。2020/10/21
ちょろこ
150
優しさが残る、一冊。面白く読了。江戸の下町 本所深川を舞台に手下と共に難事件に立ち向かう岡っ引き、茂七親分。この漂う空気感とか人情とか実に心地良くて惹き込まれるようにスルスル読めた。季節の「初もの」を巧く謎解きに絡ませながら、この時代、いかに人々が「初もの」を大切にしていたか、楽しみに食していたかを感じられたのも良かった。そして謎めいた稲荷寿司屋さん。触れ合い、美味しさとヒントをもらえるシーン、お腹の音と共に毎回魅了されたな。やるせない事件が多かったけれど優しさがほんのり残る、そんな作品。2020/07/18