内容説明
「おにぎり食べたい」―日記にそう書き残して孤独死した男性は、数カ月前まで「生活保護」の対象者だった。北九州市で続発する餓死事件。役所が繰り広げる水際作戦。一方で、「怠け者が生活保護を食い物にしている」という報道も後を絶たない。明らかにされるワーキングプアとの根深い関係―。「生活保護年収四〇〇万円相当(四人世帯)>ワーキングプア」という衝撃の事実からあぶり出される真実とは?三五〇〇件以上の相談に応じてきた専門家が、生活保護の現場から格差是正の処方箋を示す。
目次
第1章 若者に広がる貧困
第2章 「生活保護=悪」のイメージ
第3章 元ケースワーカーが語る生活保護のしくみ
第4章 水際作戦の正体
第5章 若者が生活保護を受ける
第6章 プチ生活保護のススメ
第7章 新しい支援の芽
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
matfalcon
52
生活保護(生保:ナマホ。セイホは生命保険)の論点は憲法25条(生存権)ではなく、13条(個人主義)。13条を踏まえたら「親(兄弟、親戚)に頼れ。」とは、福祉事務所は口が裂けても言えない。フタコトメには「自己責任」を持ち出す辛坊治郎@よみうりテレビは2014年、ヨット事故で海保に保護された。彼の「自己責任」はどうなるのか?資産家姉妹が餓死するほど、ナマホ制度が周知されていない、豊中市より愛をこめて。2017/07/27
ごへいもち
29
山積する問題をポンと出されてため息をつくばかり。現役の職員である著者としては希望的に締めるしかないかもしれないが実際の役所はもっと冷たいのでは?2015/11/06
崩紫サロメ
24
2008年の新書であるが、いろいろと考えさせられる。当時の若者とはロスジェネ世代で、貧困は自己責任とされ、生活保護を受けるという発想はあまりなかった。著者はいくつかのケースを挙げ、自立することを目標とする「入りやすく出やすい」「プチ生活保護」を提唱している。本書の中で印象に残ったのは、生活保護受給を拒絶する「水際作戦」の本当の被害者は若者でも高齢者でもなく、19歳以下の子ども達であると指摘している点(p.134)。この後、「こどもの貧困」という問題が深刻な問題として可視化していく。2019/12/04
ユズル
23
生活保護もワーキングプアもちょっとの差、と私は常に思っていたし、本書もあまりきっぱりとした比較はされていませんでした。北九州市の事件はテレビで観て知っていましたが、より詳しい事情が掲載されていて考えさせられました。ただ、世の中には『精神が不安定』という理由で申請が通り生活保護を受けていても、パチンコ屋に通う人も居る。やりきれないと思うこともあります。2018/06/12
とうゆ
18
若者を大切にしない国に未来はあるのだろうか。この本が書かれたのは2008年、7年後の現在、生活保護は増え続け、世間からのバッシングはより苛烈になっている。2015/06/10