出版社内容情報
藩の枠を超えた広い視野と卓越した先見で新国家のビジョンを描いた開明の会津藩士。知られることのなかった維新の傑物の生涯に迫る。
内容説明
維新のリーダーという西郷・高杉・龍馬など、勝者側ばかりが注目されてきた。しかし、敗れた会津藩にも明治維新に大きく貢献した人物がいた、山本覚馬である。「日本の独立が危うい時に、国内で相争っている場合ではない」と、薩長との融和の道を探り、維新後は京都の近代化と同志社大学の設立に奔走。激動の時代を生き抜いた覚馬の生涯から、もう一つの幕末維新史を描く。
目次
第1章 会津藩士、山本覚馬誕生
第2章 藩主松平容保の京都守護職任命
第3章 幕府と薩摩藩の思惑に翻弄される会津藩
第4章 西郷隆盛を驚かせた意見書
第5章 京都の近代化を担う
第6章 国家に尽くす人物を育成するために
著者等紹介
安藤優一郎[アンドウユウイチロウ]
1965年、千葉県生まれ。歴史家。文学博士(早稲田大学)。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業、早稲田大学文学研究科博士後期課程満期退学。江戸をテーマとする執筆・講演活動を展開。JR東日本大人の休日・ジパング倶楽部「趣味の会」、東京理科大学生涯学習センター、NHK文化センターなど生涯学習講座の講師を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Gummo
13
大河ドラマ『八重の桜』で「あんつぁま」として大人気の会津藩士・山本覚馬。新島八重の17歳年上の兄。砲術指南役の家に生まれたが、剣や槍の達人でもあり、馬術にも優れ、さらには藩校・日新館で優秀な成績を修め、江戸遊学を許される。まさに文武両道。2度目の江戸遊学では、佐久間象山を師と仰ぎ、勝海舟らと交友を結び、日本という国家的枠組でモノを考える開明派の志士となる。このあたりはすでにドラマでも描かれているが、維新後も、京都の近代化、後進の教育に努めるなど大いに活躍していたとは驚きだった。もっと広く知られるべき人物。2013/03/14
maito/まいと
12
会津戦争を経て、いよいよ京都へ舞台を移した大河ドラマ「八重の桜」。これまで注目されてこなかった人物が取り上げられている中で、おそらく一番知名度が上がって見直されているのは、‘あんつぁま’こと山本覚馬ではなかろうか。ということで遅まきながら覚馬の生涯を紹介した1冊読破。会津という‘どちらかというと’閉鎖的な雰囲気の中で、よくぞここまで開明的な考えと視野を持てたもんだ、と改めてその才覚に感じ入った、その才が京都にとっても欠かすことのできない業績を残したのだなあ。まあ、私生活はかなり墜ちていっているけど(涙)2013/08/05
ドットジェピー
5
大河ドラマ『八重の桜』の事実上のもう一人の主人公ですね。ドラマも見てましたが格好いい人生だなと思いました2017/01/17
紫
4
2013年大河ドラマ『八重の桜』がなかったら、もしかすると企画が通らなかったかもしれない一冊。薩摩藩や長州藩ともパイプを持っていて、保守的な藩風の会津藩の中では開明派、むしろ反主流派に近い存在だった山本覚馬の生涯。あくまで覚馬メインなので、新島八重や新島襄の扱いは意外なほどに小さくてびっくりであります。全体にとおりいっぺんで無難な内容の顕彰本といった印象でしたが、それだけに謎めいた部分が浮き彫りになってしまい、山本覚馬という人物の得体の知れなさが強調されてしまったような。星4つ。2021/08/02
鯉二郎
1
NHK大河ドラマ「八重の桜」の影響で、覚馬の妹・新島八重の関連本は多いが、山本覚馬の本は少ない。この本は貴重だ。徳川に忠実な会津藩の中で、覚馬は早い時期から砲術を学び、刀で斬り合う戦法から鉄砲に切り替えようとしたが、頑迷な家老らになかなか聞き入れてもらえなかった。会津藩が京都守護職を任され、覚馬も上京。闘いの日々の中で失明、そして幽閉される。もし、覚馬の目が正常だったら、戊辰戦争で会津藩を指揮し、負けたとしても悲劇的な結末は回避できた想像する。会津藩指折りの有能な人物の生涯がわかる。2019/12/09