出版社内容情報
平家全盛の世に、一介の流人の身から天下を手中にした源頼朝。その波瀾の生涯を、文覚・西行ら豪華な脇役とともに壮大に描く長編小説。
【著者紹介】
作家
内容説明
「鬼武者」と名づけられ、女官に囲まれて育った優雅な面立ちのか細い少年。源氏の棟梁を宿命づけられた少年時代の頼朝は、保元・平治の大乱のなかで囚われの身となり、時の権力者・平清盛によって伊豆に配流となる。しかし頼朝の奇蹟的な「夢の生涯」は、まさにそこから始まるのだ―。文覚・西行ら魅力的な脇役を配しつつ、最高権力者にのぼり詰めていく源頼朝を確かな筆致で描ききった力作歴史長編。
著者等紹介
三田誠広[ミタマサヒロ]
1948年6月18日大阪市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。1977年『僕って何』で芥川賞を受賞。現在、武蔵野大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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maito/まいと
19
大河ドラマ見てこの本を読むと、ものすごい違和感が(汗)それくらい頼朝とその周辺設定が異なっているのだが、それはそれで新たな頼朝像を楽しむことができた。「武士の世」を掲げながら朝廷と離れられない平家とは異なり、根本的な仕組みを変えようとする『知』を持って決起する頼朝。それまでの武士には見られなかった行政への理解を持ち、組織戦を重要視し、西行を初めとしたクセのある仲間を使いこなす姿には説得力がある。この小説を読むと、なぜ義経が頼朝に嫌われたかがよくわかるのが不思議だ(笑)2012/09/14
まちゃ
16
ぶっちゃけ頼朝より義経の方が好きです。寧ろ兄上 嫌いでした。歴史には全く詳しく無いですが報酬貰った弟に激怒して殺すみたいな惨虐的ブラザーってイメージだったけれど読んでみて少しイメージが変わった気もしなくは無いです。 頼朝は幼少期 周りに女官が多い環境で育ったんですね。女子の兄妹がいる男子って割と穏やかそうなので女性に囲まれて育つと優しい性格になるものだと勝手に思い込んでいたので意外でした。どっちがレアケースなんですかね。2017/11/08
紅花
11
今まで読んできた頼朝像とは違った頼朝。前半は少年期は公家のように育ち、後半は政子との結婚で武家の棟梁として辣腕を振るう頼朝。その変貌の課程、頼朝の成長はあまり語られていないように感じた。血族で固めようとして失敗した平家を反面教師とし、御家人を大切にした頼朝。流人だった頼朝が、人材を集めていく課程がおもしろかった。頼朝のまわりにの御家人の関係が分かりにくかったけど、その部分がかなり整理できた。ただし、鎌倉幕府構想と実現までの話が殆ど。北条家はあまり登場しない。政子はかなり悪役。2014/12/05
シン
9
今まで読んだ頼朝像とは少し違った感じがした。あとがきにもあったが、創作がかなり入っていたからだと思う。新鮮に感じた。ただ、後半年表を流すようで淡々としていた。ページ数の都合か、頼朝の事績に独創性が産み出せなかったのか?いずれにせよ、後半が少し残念だった。2014/12/18
とりべえ
4
歴史愛好家で、平家~源氏~北条の時代変遷が苦手な人は多いだろう。武士、公家、朝廷、女官までが複雑に権勢に絡む所が分かり難いのだ。だが今回、大河ドラマ「清盛」との相乗効果で楽しく読めた。「夢将軍」という言葉の意味。結局、平家を滅ぼし幕府を開いた源氏も、大きな歴史の中では北条という蝶が孵化する為のサナギに過ぎなかったという「諸行無常」を感じた。頼朝は、儚い夢のような将軍であった。青春小説の気鋭だった著者が、歴史小説の世界で足場を築いている事に感慨を覚えた。極力感情を抑えた筆致は逆に劇的に読む者の胸に迫る。2012/08/11