内容説明
出羽三山の一つ、湯殿山麓の映画ロケ現場から素性の知れないミイラが発見された。その所有権を巡り、山の持ち主と村民との争いが生じる中、肝心のミイラが忽然と消失。さらに、事件は連続殺人へと発展する。日本有数の即身仏信仰の聖地で起きた惨劇はミイラの祟りなのか―。ロケ地入りしていた女優・月宮蛍の依頼を受け、推理作家の長山と編集者の亜里沙、そして塔馬双太郎が錯綜する怪事件に挑む。
著者等紹介
高橋克彦[タカハシカツヒコ]
昭和22年(1947)、岩手県生まれ。早稲田大学卒。昭和58年、『写楽殺人事件』で江戸川乱歩賞を受賞し、文壇デビュー。昭和61年に『総門谷』で吉川英治文学新人賞、昭和62年に『北斎殺人事件』で日本推理作家協会賞、平成4年に『緋い記憶』で直木賞、平成12年に『火怨』で吉川英治文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
56
映画撮影現場で未発見の即身仏が発見される。その即身仏を巡って……。という掴みは最高なんだけど、その後が続いていないような。全体的に薄い印象を受けるんだよなあ。頁数じゃなくて、ミステリとしての質が。同様のテーマの『湯殿山麓呪い村』が怖いのは、即身仏やそれにまつわる部分を外連味たっぷりに描いているからだろう。こちらは素材自体があまりにも魅力的なのに、料理自体に失敗してしまったような感じ。肝心の木乃伊のバックボーンにしても、最後のさわりだけで触れたようになってしまっているし。好きなテーマだけに実に勿体ない。2017/04/30
Kumisuke92
11
このタイトルに抵抗感はありつつも、、、さすが高橋克彦の歴史ミステリー。羽黒山と湯殿山の対立(天台宗と真言宗)、空海の真言宗が即身仏を通じて差別性を強調していたため、このあたりで即身仏が多いのだという薀蓄には納得だ。羽黒山の名の由来は蜂子王子の前に現れた大烏から。烏の羽の色にちなんで命名されたんだとか。殺人事件の謎はともかく、東北の即身仏の歴史がわかって、面白かった。2016/03/29
makersat
4
塔馬双太郎シリーズの一冊。どちらかというと長山作治シリーズと言った方がいいかもしれない。作者の他作品『南朝迷路』同様に、チョーサク・リサが事件に翻弄され続けた後に、トーマが登場して快刀乱麻の推理を開陳する流れの作品だった。パンドラ・ケースの後に読むと、チョーサクもオケイも成長したものだなぁと微笑ましい気持ちになる。いや、彼ら四十代ですが、ついね。本作では、出羽三山の中の湯殿山を中心に、即身仏を巡る事件に焦点が当たる。即身仏や仏教への知識欲を満たしつつ、欲に塗れた人間の業を探りつつ、高橋氏らしい筆致の作品。2016/05/13
杏
3
山形の出羽三山が東北屈指の霊場と呼ばれる様になった経緯がよく分かった。同じミイラでも目的の違いで、即身仏と弥勒信仰によるものとでは性質が全く異なるということや、廃仏毀釈当時の各寺社の力関係等々盛り沢山。歴史を絡めたミステリは知識欲を満たしてくれるから満足度は必然的に高くなる。温泉、地元名産の料理、神社仏閣巡り、歴史トリビアで旅情も満点。殺人事件はおまけです。チョーサクの鬱陶しさも塔馬双太郎の爽やかさを引き立ててくれてると思えば、いいキャラだと思える…かな。2014/12/15
horuso
2
リサ&チョーサクシリーズの最後。これで終わりかと思えばちょっと寂しい。出羽三山、即身仏、神社などに関する知識が得られてためになるが、ミステリとしては…。2014/12/13