出版社内容情報
名族島津の最大版図を確立した西の英雄を描く。
薩摩・大隅の二カ国から九州全土を席巻、名族島津の最大版図を確立した稀代の名将・島津義久。その波乱の生涯を克明に描いた力作小説。
戦国時代の島津氏といえば、関ケ原合戦で敵中突破を敢行した島津義弘がよく知られる。しかし、薩摩・大隅・日向の三州統一を果たし、島津氏を戦国大名として飛躍させた当主こそ、その兄・島津義久である。二歳違いの兄弟であった義久と義弘は、兄の「智」・弟の「勇」によって九州全域を席巻し、島津氏の最大版図を現出させた。
▼じつは当主であったことがない義弘に比べ、義久があまり語られてこなかったのはなぜなのか。本書では、一門や譜代、国衆の間にも火種を抱えながら、家中の結束に力を注いだ義久の苦悩に満ちた闘いの日々を描いていく。やがて秀吉との対峙と臣従、関ケ原後の家康との駆け引きと進むにおよび、要に座る義久の知恵と胆力が光ってくる。合戦での武勇譚では弟に劣るものの、最後に存続の危機から家を守った器量人の姿に、面目躍如たる義久の実像を見る思いがする。
▼鹿児島出身の歴史作家が渾身の筆で描く力作長編小説!
▼文庫書き下ろし。
●第1章 在家菩薩
●第2章 岩剣の初陣
●第3章 苦戦の大隅・日向合戦
●第4章 日新斎逝く
●第5章 宿敵放逐
●第6章 高城合戦
●第7章 肥後から島原へ
●第8章 前途の暗雲
●第9章 天下人との邂逅
●第10章 屈従と雌伏の日々
●第11章 最期の賭け
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MIKETOM
7
後半は読んでて辛かった。九州を制覇しつつあった島津家。しかし秀吉の台頭により全て瓦解に帰す。武闘派連中が深入りし過ぎたせいなのだが、戦後処理は義久一人に丸投げ(歳久の最期は悲惨だったが)。朝鮮の役、関ケ原でも政治面で苦労しながらお家の存続を願う。しかし息子がいなかったため義弘の息子(忠恒)を娘婿にするが、これが冷酷・無残・悪謀の権化。義久を完全に敵視し少しずつ追い詰めていく。義久の血は残さないと側室には子を産ませるが正室には手をつけない。義久の他の娘の血筋まで滅ぼされてしまった。涙無くしては語れない人生。2020/08/13
バルゥバル
5
義久の苦悩に満ちた生涯と、島津宗本家の憾みを瞼が目蓋に焼き付く一冊です。難い文章と登場人物の多さから、ちゃんと内容を理解するのには二度読み推奨です。色々と調べて読み進めていくと、義弘に対する印象が変わりました。忠恒の所業も、後世への影響を考えると複雑な思いを抱かされます。有名な日新斎から義久が受け継いだ経文を焼き捨てる逸話の他、涙無くしては読み続けられない場面が多く有ります。充溢した内容なのですが、もっと義久を主人公の物語を読み続けたいと。読了した後に、まだまだ読み足りないと思える名作です。2013/07/17
ゆうへい
3
島津義久の苦悩は、読んでいてとても複雑に思いました。本当に陰に隠れた存在だったということが理解できました。それから、後半が寂しかったように感じます。
ひよこ
3
家督継承者の苦悩2019/01/27
MAO
3
島津奔るや島津義弘の本を読んだ後に読むべき作品。