出版社内容情報
仏道修行と和歌の道に生きた漂泊の歌人の生涯。
西行はなぜ出家したのか。奥州衣川への度重なる旅に秘められた思いとは――。老いた西行が愛弟子に胸奥の真実を語る異色の力作小説。
「おう、そうじゃ。吾らの枕元に置きし手控えをば寄こしてくれい」
▼「はい、はい。数々のお歌などを書き留められしご大切にござりますな……」
▼「おう、ここには、前後三度におよびし、奥州衣川に杖をひきし事の次第がこもっておるわ。さよう、これをひもときて、そちへの、耳の形見といたしたい」
▼――南河内弘川寺境内の草庵にて、愛弟子北弁にかしずかれて老衰の身を横たえる西行は、その入寂の近きを悟り、三度におよんだ奥州衣川への旅について、北弁を相手に静かに昔語りをはじめる。衣川への旅を続けながら、歌人は時代に何を見たのか? 数々の名歌に託されたメッセージとは? 旅の記憶、詠んだ歌への思いから、やがて若き日の恋や出家の真相など、「漂泊の歌人・西行」の内面が浮き彫りになっていく。
▼著者ならではの味わい深い描写で、老境の西行の心象風景を見事に再現した本作は、謎多き“歌聖”の真実に迫った意欲作である。
▼文庫書き下ろし。
●衣川
●歌合
●真紅の射籠手
●三位の目
●身を捨つる
●霜の道
●放生会
●人肌大白
●又の吾
内容説明
南河内弘川寺境内の草庵にて、愛弟子北弁にかしずかれて覚悟の死を迎える西行は、その入寂の迫ったことを悟り、三度におよんだ奥州衣川への旅の覚え帖をひもとき、静かに昔語りをはじめる。旅の記憶、詠んだ歌への思いから、やがて若き日の恋や出家の真相など、「歌人西行」の内面が浮き彫りになっていく―。師弟の対話によって物語を進めながら、西行の真実の姿に迫った意欲作。
著者等紹介
長尾宇迦[ナガオウカ]
1926年、旧関東州大連市に生まれる。国学院大卒。元岩手県立高校教員。鈴木門下会会員。『山風記』で第2回小説現代新人賞受賞。『幽霊記』で第98回直木賞候補
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
-
- 電子書籍
- ライブダンジョン!【分冊版】 28 ド…