出版社内容情報
心あたたまる心象風景に癒される短編小説集。
事故で妻を亡くした男が早春の午後に妻の故郷で見つけたものは……。人びとの胸に去来する思い、心象風景を温かく描き出した感動作。
勤め先の上司にほのかな恋心を抱いた子持ちの女性。定年を迎えた日に、別れた妻に花束を届け、感謝の気持ちを伝えた男。子供たちがいなくなった家で、インコをかすがいに生きる老夫婦――。さらにボタンを掛け違えてしまった嫁と姑や、孤独ゆえに心を寄せ合う隣人同士など、日常生活の中の何気ない一コマを描いた物語が、渇いた心にしみわたり、忘れていた人生の記憶を呼び覚ます。
▼切なく、心温まる人間ドラマが満載された本書。読み進めるうちに、なぜか心の澱みが洗い流されたような気持ちになるのは、著者の端正な筆致ゆえか。
▼生きることに疲れていても、本書を開くと、いつでもやり直しがきくような気がする。内海隆一郎の世界は、こんこんと湧く泉のごとく涼やかでありながら、その実、明日へのエネルギーに満ち溢れているのである。生きていることが、いとおしくなる24篇。
▼解説は詩人で文芸評論家の安宅夏夫氏。内海文学の真髄を語り尽くしている。
●きらめく波
●目覚めまで
●弁当箱
●たんこぶ
●みのむし
●あのころ
●かたぐるま
●迷い猫
●花束
●山へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
35
内海さんの本の多くは図書館の書庫にしまわれています。リクエストしては少しずつ読んでいるのですが、どの作品も読後感はほんのりとした温かさです。文体が私に合っているのか、素直に頭にも心にも入ってきて、深い感動はありませんが、いつも心地よい。あとがきを読むと60歳を超えた人びとの悔恨や切ない気持ちとあって、あぁ、そうだったんだ。自分の気持ちと寄り添う感じなんだ。この歳まで生きると色々あります。それでも生きて本が読めて、幸せをかみしめてるのかな。2017/07/13
tnyak
0
20年ほど前に知人から、涼やかで透明感ある作風の作家だ、と内海作品を勧められた(作品名は失念)。本作品の24の人間ドラマ、何れも心温まる短編だった。2020/05/08
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