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失われた景観―戦後日本が築いたもの

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  • サイズ 新書判/ページ数 233p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784569622705
  • NDC分類 518.8
  • Cコード C0230

出版社内容情報

視線を遮る電線群、けばけばしい看板……戦後日本が築いた醜い日常景観。その実態を神戸、真鶴などのケーススタディ、欧米との比較を通して検証する。

視界を遮る電線、けばけばしい看板、全国均質なロードサイド・ショップ群……生活圏における景観が、これほど貧しく醜い国もない。まさに「清潔な廃墟」である。

▼著者は言う。その荒廃こそ経済発展を全てに優先させた戦後日本の姿ではないか。同時に、歴史・風土と断絶した景観は、人間から過去の記憶を抹殺し、「豊かさ」を奪ってきたのではないか、と。

▼昨今、騒音を拒否する主張が生活環境の実感として唱えられている。だが景観の場合、日常景観の荒廃に関する危機感は未だに低く、議論の大半は伝統的町並み、自然環境などについてのものである。

▼本書では、四つの事例(郊外景観の興亡、神戸の市政と景観、真鶴町「美の条例」の理想と現実、電線地中化問題)を通して、日常景観を汚しても省みない日本社会の実像を映し出す。同時に、世紀末的景観へ推移する現状へ警鐘を鳴らす。

▼活力ある未来をイメージするために景観保全が必須であると説く、異色の社会経済論。

●序章 生活圏における景観荒廃 
●第1章 郊外景観の興亡 
●第2章 神戸の市政と景観 
●第3章 真鶴町「美の条例」の理想と現実 
●第4章 電線地中化問題 
●終章 世紀末的景観のはじまり

内容説明

視界を遮る電線、けばけばしい看板、全国均質なロードサイド・ショップ群…生活圏における景観が、これほど貧しく醜い国もない。その荒廃こそ経済発展を全てに優先させた戦後日本の姿ではないか。同時に、歴史・風土と断絶した景観は、人間から過去の記憶を抹殺し、「豊かさ」を奪ってきたのではないか。四つの事例(郊外、神戸市、真鶴町、電線地中化問題)を通して、日常景観を汚しても省みない日本社会の実像を映し出す。景観保全が活力ある未来を生むと説く、異色の社会経済論。

目次

序章 生活圏における景観荒廃
第1章 郊外景観の興亡
第2章 神戸の市政と景観
第3章 真鶴町「美の条例」の理想と現実
第4章 電線地中化問題
終章 世紀末的景観のはじまり

著者等紹介

松原隆一郎[マツバラリュウイチロウ]
1956年神戸市生まれ。東京大学工学部都市工学科卒業。同大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。専攻は社会経済学・相関社会科学。消費社会化した資本主義の現実を、詳細な取材と思想史の両面から分析している
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

81
都市景観についての著者の持論を展開されています。事例をいくつか挙げて説明しています。確かに景観については様々な意見があるという気がします。ただ都市計画を行い昔の景観を取り戻すことと自然のままにしておくということは当然のことながら異なると思われます。また電柱地中化のことなどはコストなど問題をどうしていくかもあります。景観を良くしていくことには賛成ですが、地方自治体の在り方も考慮に入れていくべきではと思います。2015/10/23

Nobu A

6
先日読了の「書庫を建てる」共著の一人、松原隆一郎著書2冊目。前書で端正な文章で景観に対する思い入れが綴られ、気になり手に取った。4つの事例を通して現在の国内景観事情を検証及び考察。学者らしく丹念に調べ上げ、とても勉強になった。アメリカや欧米主要都市のような電線地中化が遅れた理由及び実現の困難さ、ロードサイド商業化の現状等、興味深い内容。他方、筆者はかなり悲観しているが、例えば、台湾のカオスのような景観(失礼!)もある種の独自性。地中海の街並みには憧れるが、個人的には国内全土の電線地中化を実現してほしい。2024/03/25

無職のhkmaro

4
この本の景観観ってのは要するに景観に関してはコミュニタリアニズムで行くべき、っていう風に言い換えられると思うのだが、それはあくまで官が是とする「コンパクトシティ」に則った場合に経済的にも合理性を持つ。共同体主義が奏功するのはその地域の住民の流動性が低いから。逆に流動性の高い大都市や郊外では難しそう。東京にいた頃、埼玉のイオン行ってなんかほっとしてしまった時のこと思い出すと、何が良い景観かなんてのは一概に断定できない。電柱や電線だって情緒を醸すことはある。そのへんの考察が薄い。とはいえ思索の材料にはなる本。2014/10/15

脳疣沼

3
電柱の多さ、その醜さはその通りだと思うが、景観に対する著者の思いはどこか独りよがりで、思い込みが強いと思う。東京の無秩序な景観を愛する人だって、国内外にいるのである。ヨーロッパにある秩序を日本に求めるのはくだらない気がしないでもない。著者の嫌うロードサイドの風景を好む日本人もいることを忘れているし、自分の美観が優れている保証もない。私も日本の景観を良くしたいなあとは思うが、著者の考えには疑問もある。2014/07/05

yamayuuri

2
郊外ロードサイド、神戸、真鶴、電柱地中化について取り上げ景観について考察している。一番興味深いのは真鶴の例。美の原則を公共のものとして決めていく考え方は面白いが、それが専門家や高層マンションに限られている気配があるのが残念。真鶴みたいなところもいいけど、景観条例の効力を都心の再開発地帯で発揮させるにはどうしたらいいのか。2010/05/02

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