出版社内容情報
数々の不幸を乗り越え、一人の人間として力強く生きた江戸時代の女流作家只野真葛。自由であざやかな個性に輝く一生を描き切った力作。
内容説明
「江戸の町にも清少納言がいた」―『赤蝦夷風説考』を上申した工藤平助の娘あや子、後の只野真葛は、家の没落や結婚の失敗などの幾多の苦難をのりこえ、自由であざやかな個性に輝く著作を残した。封建社会の束縛に取り囲まれながらも自分を見失うことなく、一人の人間として力強く生きた女流作家の生涯を華麗な筆致で描く。著者が長年にわたって追求してきた女性像が凝縮された歴史長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鱒子
73
才能ある女性には極めて不利な江戸時代の封建社会。その中で女性の可能性を模索し、書くことで己を見出した女性がいた。只野真葛 こと 工藤あや子。彼女は裕福な家に生まれ高い教養を身につける。しかし人生の苦難は多く、彼女がエッセイ「独考」をまとめたのは、江戸を離れ仙台へ転居したのちの最晩年のこと。本書の濃縮された最終章は実に力強い。2022/06/23
onasu
19
江戸にもこんな女がいた。永井先生が、そんな書き出しのあとがきで辿られたのは、只野真葛。 田沼意次の蝦夷地開拓の元となった「赤蝦夷風雪考」の著者工藤平助の娘。平助は伊達藩江戸詰めの藩医で、情報収集の役も負っており、田沼が健在な折は工藤家も隆盛だったが…。 真葛は井伊家の奥勤めをしていたが、実家に戻り、初婚は離別、再婚では仙台で十数年の後に死別。真葛の運勢も上向かない。 そんな中、晩年に著した随筆「独考」では、生い立ち、勤めからか自由な着想があったが、残念ながら、その時代に日の目を見ることはなかった。2014/12/27
ムイシュキン
1
江戸時代の知識人である医師の娘として生まれた工藤あや子。このような立場の人は数多いたのでしょうが、文章を残すことが非常に難しく希であったことがよく分かりました。ただ、全編が残っていないとのこと。惜しいですね。2019/04/20
なおり
1
江戸時代の清少納言とのこと 2014/09/13
よう
1
構成がわかりにくい。最初は作者の完全な創作と思い読んでいったところ、後半になって主人公の女性が書き残したものが元になっているらしき記述が挟まりだす、それが話の流れを切ってしまう。江戸の昔にこのような、不運にめげず自立した女性が実際にいた、という事はわかったが、時代小説としてはあまり楽しめず。2010/04/06