内容説明
豊かな自然とひなびた山村を舞台に、淡々とした筆致で描き出される渓への憧憬と人生の悲喜…。自然と人間との素朴なふれあいを軸に、著者の心の遍歴を語る第一部。秋本紗恵との偶然の出会いから訣別に至るまでの、あたかも私小説の趣を持つ第二部。ここには、心に傷を持ちつつ遙かなる山河を彷徨した、著者の若き日々の魂の心象風景が全篇を通じて鮮やかに映し出されている。読む者の心をとらえ、打たずにはおかない詩情あふれる釣り半生記。
目次
間引き釣り
秋邨師との出会い
巡業事始
闇市と山のあいだ
夕立のあと
闇中幻女
天狗の神楽
山迷い
竜神村
春愁
めぐりあい
恨みの雨
木賃宿で
出奔競べ
村の出入
炭焼小屋のみやげ
山小屋の夜語り
白い犬
出来ごころ
道行き
鮎憑き
市中の村にて
遠い花
導火線
店開き
意馬心猿〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yamakujira
4
戦後動乱期を生きた男の自伝が36編のエッセイの活写されて、炭焼きや行商や峠道など数年後には消えてしまう山里の風景を見せてくれる。2部構成エッセイ集は、第1部で師匠との釣行ではじまり、妻と師匠の死を経て、次第に生々しくなる。第2部になると、後妻との不和から愛人を呼び寄せたり、なのに次々と妻が子供を産んだり、渓流釣りは家庭から逃げる方便に見えてしまう。赤裸々な告白にのぞく煮え切らない態度に人間らしさを感じるけれど、好感は持てないな。この時代の著者に天理教はどのように影響しているのだろう。 (★★★☆☆)2018/06/11
kawasemi
0
極上の私小説だと思って読みましょう