内容説明
ぼくの名前はオマル。シリアの、ボスラって町に住んでる…っていうか、住んでいた。政府への抵抗運動が広がって危険だから、田舎に逃げなくちゃならなかったんだ。そして、さらにおとなりの国、ヨルダンまで…。ぼくたち家族の旅は、いつまで続くんだろう?
著者等紹介
レアード,エリザベス[レアード,エリザベス] [Laird,Elizabeth]
イギリスの作家。夫の仕事の関係で、エチオピアやレバノンに長期滞在した経験を持つ。パレスチナの子どもたちを描く『ぼくたちの砦』、エチオピアのストリート・チルドレンを描く『路上のヒーローたち』、内戦下のレバノンを舞台にした『戦場のオレンジ』(いずれも評論社)など、問題作を次々に発表している
石谷尚子[イシタニヒサコ]
翻訳家。上智大学文学部英文学科卒業。NPO法人難民自立支援ネットワーク理事長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
64
夫婦と子ども5人からなるシリア難民の一家がボスラからダルアーを経て、隣国ヨルダンのザータリ難民キャンプに辿り着くまでを描いた家族の物語。主人公は13歳のオマル少年。頭脳明晰な姉、反政府活動に共鳴する脳性麻痺の兄、下にはまだ5歳の弟と1歳半の妹がいる。父親は政府機関で働く公務員で、自分たちの住むアパートが空から降ってきた樽爆弾で廃墟となったのを契機に、家族の安全を脅かすこの国から逃げることを決意する。身ぐるみはがされての危険な逃避行、旅の終着点は何者でもなくなった難民キャンプでの生活だった。空からふってくる2018/03/16
ポタオ
26
内戦が始まる前の喧騒から難民キャンプでの生活を描いた作品です。悲しい話ですが、これが現実に近いのだと考えると胸が痛みます。自分ではどうしようもない環境の変化、内戦により平和な日々が失われていくことのなんとやりきれないことでしょうか。戦火が徐々に徐々に広がっていき、国外に難民として移動していく人々。祖国に帰れないというのはどれほど辛いことなんでしょう。自分の幸せを噛み締めねばいけないですね。2018/07/26
星落秋風五丈原
23
まさに今話題になっているシリアから抜け出してくる一家を次男の視点で描く。まひのある長男、優秀な長女、政府を信じている父、姑との仲に苦しむ母、幼い弟妹達は妹の病気を治すためにも結局祖国を離れてイギリスへ。オープンエンドになっているが旅先での苦労も思いやれる。2018/02/28
まる子
19
13才になっていないオマル。家族7人とシリアのボスラに住んでいた。2011年のシリアではある事がきっかけで紛争が勃発。祖母の家へ避難→難民を待ち構える危険なヨルダン川を渡りヨルダンへ避難。彼らは難民になったー。持てる家財は限られ、不便な生活を強いられる。父親は死に、残された家族のこの先は…。妹の病気でロンドンに亡命する事になった。最後にはハッキリした未来は描かれていないけれど、作者は「読者に委ねる」と。作者エリザベス・レアードのサイトhttp://www.elizabethlaird.co.uk/2024/02/12
みーさん
9
シリアの内戦のきっかけが、2011年3月高校生数人が「政権崩壊が国民の願い」というスローガンを落書きしたこととは知らなかった。戦争が始まる時、逃げ惑う人々、家族に迫る危険。一生懸命生きるオマルとムサの家族。2019/06/21