内容説明
ほんのはずみで、戦場に行くことに決めたのだった。兄のチャーリーと一緒に。だってぼくらは、いつでも、何でも、分かち合ってきたのだから。そこは、砲弾が飛び交い、毒ガスがおおいかぶさり、塹壕と鉄条網に閉ざされた世界だった。憎むべき相手は、敵だけではなかった。そして今、六月二十五日午前六時をむかえようとしている…。戦場におもむいた兄弟のあまりにも痛ましい運命。
著者等紹介
モーパーゴ,マイケル[モーパーゴ,マイケル][Morpurgo,Michael]
1943年、イギリスのハートフォード州生まれ。ロンドン大学キングズ・カレッジ卒業。小学校教師を経て作家となり、とりわけ児童文学作品を数多く発表。この分野で、現代イギリスを代表する作家としての地位を確立している
佐藤見果夢[サトウミカム]
1951年、神奈川県生まれ。明治大学文学部卒業。公立図書館に勤務ののち、絵本や児童文学の翻訳にたずさわる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
44
何気に見た配信動画、筆者が言わんとする「不条理な戦争に対する静かな怒り」・・しかも児童文学という場で!感銘し、原作を一気読み。いつもながら英国児童文学の奥深さを味わう(無論、映画化された作品も素晴らしく、今回はどちらも質は上々、満足)不幸な最後を遂げた父亡き後兄チャーリーの陽気さの影に隠れるようにして大きくなったトモ。前半では大佐へのいら立ちに「過去の空しさ」を体現させ、後半では延々と繰り広げられる「西部戦線」での異常な上司に怒りを結実させている。父の形見の懐中時計に、時~永遠を体現させているかのよう。2016/05/12
miyu
38
第一次世界大戦頃のイングランドの片田舎。父親が倒木事故で亡くなり貧しい生活や理不尽な思いをしながらも仲良く暮らすピースフル家。しかし次兄チャーリーが志願兵として戦争に赴くとまるで背中を追われているような落ち着かない気持ちになった。チャーリーと共に末っ子トーマス(トモ)も戦地に向かう。臆病で特別優れたところもない彼は私たちの似姿であり、この物語の大切な語りべだ。誰しもそれぞれの慎ましい人生があり、なのに戦争という名のもとに無残にもその幸せは一瞬のうちに一掃される。読了後にもしばらく胸がキシキシと鳴り続けた。2018/04/30
とよぽん
37
やはり、戦争を起こす国、参加する国は狂っている。軍隊も然り。表紙カバーにあらすじが「そこは、砲弾が飛び交い、毒ガスがおおいかぶさり、塹壕と鉄条網に閉ざされた世界だった。憎むべき相手は、敵だけではなかった。」最後の文がこの作品のテーマに直結している。軍事刑罰、軍事裁判、銃殺刑という同胞に対する不当な処分。英国政府は、公式な謝罪を拒み続けているとのこと。モーパーゴ自身が、好きな自分の作品4冊の中に「兵士ピースフル」を挙げている、渾身の物語。原題は「PRIVATE PEACEFULL」2003年。2019/06/27
Cinejazz
20
英国デヴォン州の小さな村で育ったピースフル(「平和な」「穏やかな」の意)兄弟が、ほんの弾みで出兵させられた先は、砲弾が飛び交い、毒ガスが覆いかぶさり、塹壕と鉄条網に閉ざされた世界だった・・・。第一次世界大戦中のイギリス軍兵士290名以上が、脱走、臆病行為、持ち場での居眠り(多くは砲撃による精神的外傷)によって銃殺刑に処せられた、という軍事裁判記録に衝撃をうけた<マイケル・モーパ-ゴ>が、人間が造ったこの世の地獄(戦争)の悲劇を描いた著者入魂の本作は、『西部戦線異状なし』と並ぶ、胸に迫る感動作。2023/07/04
まあやん
19
なぜ時間が書かれているのか、もしかして…、と思いはじめたのは後半。トモが今までの家族との時間、とりわけチャーリーとの時間をすべて思い出したい、この時間を全てそのことに使いたいという思いにギュッときた。理不尽な戦争、狂気。あんまりだ。チャーリーの死に向き合う人としての尊厳、すごすぎる。読み終わってからいろいろな思いが残る作品だった。2019/03/13
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