内容説明
兄さんが、アメリカ陸軍の兵士としてベトナムに行った。兄さんは、陸軍が軍用犬を必要としている、と伝えてきた。ジャーマンシェパードのウルフィー、大きな体の、人を喜ばせるのが大好きなウルフィーを、ぼくは差し出すことに決めた…。やがて、戦場から手紙が届き始めた。「ウルフィー」の名で。今なお戦火の絶えない世界に問う哀切な物語。
著者等紹介
シャーロック,パティ[シャーロック,パティ][Sherlock,Patti]
アメリカの作家。コロラド州出身。一時、首都ワシントンで新聞記者をしていたが、その後ロッキーの山ふところに住みつき、新聞・雑誌を舞台に文筆活動を始める。やがて小説なども出版。現在は「アメリカ西部作家の会」の主要メンバーとして幅広く活動し、注目されている
滝沢岩雄[タキザワイワオ]
1945年、埼玉県生まれ。東京大学経済学部卒業。毎日新聞社に入社し、主に社会部、学芸部、論説委員を経て、現在、編集委員。甲南女子大学非常勤講師も務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はる
44
民間から軍用犬として供出され戦地に行ったウルフィー。軽い気持ちからウルフィーを提供した飼い主の少年マークですが、すぐに過ちに気付き激しく後悔します。戦地から送られてくる担当兵からの手紙に心を痛める日々。ある行動をとることで成長していきます。政府の詭弁と市井の人々の無力さ。戦争によって振り回される普通の家庭。今の日本にも通じる内容です。戦場の兵士たちから愛されたウルフィーの手紙が救い。2017/06/25
みゆき・K
12
ベトナム戦争の志願兵になった人気者の兄ダニー。弟のマークは兄への対抗心、嫉妬心から愛犬ウルフィーを軍用犬に提供する。しかしそれが大きな過ちだったことに気づき、ある行動を起こす。愛国心とアメリカンデモクラシーの狭間で揺れ動くマークの成長譚。身勝手な人間の犠牲になる犬が哀れだ。最終章、マークからアルフィーへの手紙は涙で字がかすむ。アルフィーが兵士達の命を守り、心を癒す存在だったことに救われる。良書だと思うけれど、動物保護団体から引き取ったアルフィーを軍用犬にしたマークがどうしても好きになれず、評価が半減。2022/02/18
inarix
2
1967年、ベトナム戦争が泥沼化の一途を辿っていた時期のパトリオティズム(愛国心)とアメリカン・デモクラシー吹き荒れるアメリカを舞台に、13歳の少年マークがベトナムに送った愛犬ウルフィーの活動と運命、思春期の少年の成長を描く児童文学。2013/07/31
こはね
2
マークは少年なりに精一杯がんばった。タッカーは優しかった。ウルフィーは幸せだったと思う。最後のウルフィーに宛てた手紙で涙が出た。2011/12/22
nekopon
2
アメリカの軍用犬は「装備」として扱われ、兵士と共に帰国することは許されなかった。戦地でどんなに兵士の命を救い、周囲に安らぎを与えたとしても……。健気な犬のウルフィーと訓練士のタッカーからの手紙に胸を打たれます。2010/10/26