出版社内容情報
ディダコイ…ジプシーと白人の混血児。祖母の死でひとりになったディダコイの少女キジィは、老提督の家にひきとられるが…。ちがう世界のなかで人々と葛藤しながら、閉ざした心を解放してゆくキジィの物語。ウィットブレッド賞/厚生省中央児童福祉審議会特別推薦 小学校中学年~
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シュシュ
30
良かった。ジプシーの少女キジィが白人の学校に適応する難しさや集団いじめなど、辛い場面もあるが、キジィを静かに見守る大人もいて、とても読み応えがあった。「がまんして飲みこんじまわなくちゃだめだよ。ぐっと飲みこんじまいなよ。ジョーは馬だ。馬ってものは人間の一生ほどは、どうしたって生きられるものじゃないのさ。生まれては死ぬ。」愛馬ジョーが死んでしまった時、キジィにナットがかけた言葉にじんときた。「水準が異なっている、ということは悪いことではない」という聡明で寛容で辛抱強いオリビア・ブルックが素敵。 2019/04/14
みつばちい
26
生粋のジプシーではなく、母がアイルランド人の“ディダコイ”だったキジィ。おばあちゃんと馬のジョーと幸せに暮らしていたが、学校に行かされることになり、おばあちゃんが亡くなってしまい、親戚にも辛くあたられ肺炎になってしまう。ジプシーたちに果樹園を解放してくれていたトウィ提督のお屋敷にしばらくの間滞在し少しずつ元気を取り戻すが、女手のない提督の家で養育するのは好ましくないと議会で決まり、独身の女性ブルックさんの所に引き取られた。続く2020/01/20
マッピー
21
小学5年生の時、誕生日でもクリスマスでもないのに母が買ってくれた本。『ディダコイ』というのは、ジプシーと白人の間に生まれた混血の子どものこと。主人公のキジィは両親がいなくて、おばあさんと年老いた馬と一緒にトウィス提督のお屋敷の広大な敷地の片隅で暮らしている。そんな時、唯一の親族であるおばあさんが亡くなり、一人取り残されるキジィ。私が子どもの頃の児童文学って、みなしごになって苦労した子どもが最終的には幸せを掴む話が多かったけれど、これもまたその系列の話。この本と『家なき娘』が、少女時代のバイブルでした。2021/06/05
ヴェルナーの日記
18
タイトル『ディダコイ』とは、『ジプシー』のことだが、今はロマーニ民族と称する。起源はインド・アーリア人であり、AD1000頃、ビザンチン帝国の侵略により、ヨーロッパに拡散した。それ以来、定住することなく、各地を転々としてきた民族である。『ディダコイ』とか、『ジプシー』という言葉には差別的意味が含まれているため、現在は使わない。よって、このタイトルから、本作の物語の内容が推し量れる。主人公キジィは、曾祖母と一緒に提督と呼ばれる農園主の庭端にて、ワゴンで暮らしていたが、突然、曾祖母が亡くなってしまい……。2014/10/17
雪丸 風人
17
女の子が夢のように憧れる奇跡の物語。主人公はジプシー仲間に厄介者扱いされ、町や学校でも異端視される半ジプシー。誕生日も判らない女の子です。一人ぼっちになった彼女は、徹底して差別され、いじめにも遭い極度の人間不信に陥ります。そんな彼女の心を少しずつ開かせたのは、提督屋敷の不器用な男たちと気高い心を持った女性のねばり強い働きかけでした。異文化を理解し交わることの難しさ実感できる本ですね。“親切な資産家、心の折れない里親、誰も逆らえない先輩”彼らを味方に得て少女は高みにのぼります。(対象年齢は13歳以上かな?)2020/02/14